高学歴でも「頭がいい」とはいえない 「仕事ができない人」に欠けている要素

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なぜ仕事ができない残念な人がいるのか(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)
なぜ仕事ができない残念な人がいるのか(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

あなたの職場には「仕事ができない人」がいないだろうか? 「全くあいつときたら……」「使えないなぁホントに!」と舌打ちしたくなる人のことだ。どんな職場でもいないことはないであろう。

過去2回のコラムでは、クロスボーダーM&Aやアセアン財閥について書いてきたが、今回は趣向をガラッと変えて、仕事ができない人の特徴とその理由について考えてみたい。

■仕事遂行上に必要な4つの能力

仕事ができない人の特徴を挙げると、おおよそこんな風ではないだろうか。

時間に遅れる、期限に間に合わない

説明や報告を求めるとダラダラ長く要領を得ない

当然プレゼンをさせても下手

もちろん図や資料は雑で汚い

失敗に対する言い訳と謝罪のやり方が下手でイラッとさせる

顧客に対しても先方の都合の前に自分の理屈を展開させてしまうので怒らせる

失敗からの学びがなく、また同じ過ちを繰り返す

これらを要約すると、仕事ができない人に欠けているのは

(1):タイムマネジメント能力

(2):相手目線に立っての発想力、もしくは共感性・協調性

(3):コミュニケーション能力

(4):自己分析力・改革力

ということだろうか。

名門大学を出て学歴が高いといわれる人でも、このような能力を持ち合わせていないケースが少なからず存在する。プライドばかりが高くて、クライアントからの評判は悪く、同僚からも敬遠されるような困った人だ。有名大学を出て鳴り物入りで配属されてきた新人クンが「使えないヤツ」だった場合、仕事に厳しい先輩OLたちがランチを食べながら、その「困ったくん」を評定している様が目に浮かぶ。

「●●くんってさぁ、T大だったよね」

「しかも高校はK高だよ」

「うわーエリートじゃん」

「で、何であんな風なわけ?」

「頭はいいんだろうにねぇ……残念!」

随分厳しいランチ会議であるが、私もダメ出しをさせていただこう。特に最後の「頭はいいんだろうに」に一言。顧客を怒らせ、自己分析ができない人は、決して頭がいいとはいえない。それなら「K高→T大」はどう説明できるのか? 彼女達の会話から察するに、K高もT大も有名校のようだ。企業に入社するときと違い、入学試験には人となりを審査する面接が存在しないケースも多い。だから成績さえ良ければ、名門といわれる学校にも入学できてしまうのだ。

■大切なインターパーソナルスキル

先に挙げた4つの能力のうち、2番目と3番目はクライアントや同僚という「人」と接する際に必要とされるスキルだ。インターパーソナルスキル、インターグループスキルともいわれる。対人・対グループでのコミュニケーションを通じて相手にInfluence(影響)を与え、自己の目標を達成していく能力だ。最後に挙げた自己分析力も、自分を他人であるかのように客観的に見る力なので、やはり広義の対人スキルということができる。また1つ目のタイムマネジメント力については、他人と接するのであれ、自己と向き合うのであれ、時間の管理はどうしても必要となってくる。そのため、対人スキルを円滑に機能させるための基本能力だといえる。

一方、高学歴ではあるが仕事ができない人というのは、知識はふんだんに持っていて、それを「解答」として紙に落とすことはできる。そう、成績はいいのだ。しかし、そこに「対人」という要素が出てくると途端に仕事ができなくなり、あろうことか相手を怒らせてしまうという“イタい人”になってしまうのだ。

受験勉強に没頭するあまり、部活はやめてしまった。アルバイトもしたことがない。そして息抜きはオンラインゲーム……。人との接触が極端に少ない時間を過ごした人もいるであろう。しかしながら、人間は他人との関係なしに生きていくことはできない。自分以外は家族であっても他人であるので、他者とのインターパーソナルスキルをいかに身につけていくかは人生を通した重要なテーマである。

■AnswerとSolutionの違い

前の段落で「解答」という言葉を使ったが、受験勉強での「解答」と、実社会で求められるそれは、全く異なる意味合いを持っている。受験勉強において、我々は膨大な知識を詰め込み、その定着を図るためにやはり膨大な量の問題集をこなす。

問題集の「問題」とは、英語でいえばQuizとかQuestionになる。そして解答はAnswerだ。正解は一つしかない。しかし、世の中にあふれている「問題」は、ProblemやChallengeであり、それに対するAnswerはない。求められるのは、Solutionだ。導いたSolutionも、価値観が多様化している現代において、万人に適合することはまずない。必ず反対者が出てくる。それに対してインターパーソナルスキルを用いつつ、相手にInfluenceを与えて解決していくことができるのが「仕事のできる人」なのだ。

相手にInfluenceを与えるということは、相手を納得させることを意味する。Challengeに対面している相手に対し、提案したSolutionで「なるほどね」とストンと腹落ちさせられるかということでもある。悩んでいる相手に長い話をしても一層混乱させる。だから簡潔で印象に残る提案をしたいものである。

コンサルタントや投資銀行の人間がよく使う言葉に「エレベーターピッチ」がある。M&Aの提案をすべく、某企業の社長にアポを取った。100ページにもわたる提案書を持参したが、アポの時間になって現れた社長が急に面談できなくなったと言い出した。「岸田首相に急に呼ばれてね。今から官邸にいくんだよ。歩きながらで悪いが君の話を聞こうじゃないか」――。最上階の社長室から地下駐車場までエレベーターに乗っている間に行う提案。これがエレベーターピッチだ。時間にしてわずか1分、伝えられる項目はブレットポイントでせいぜい3点、強い印象を与えるためには数字を効果的に使うことも必要だ。ネット上には「上手な報告書の書き方」「コミュ力Up法」などのハウツーがあふれているが、エレベーターピッチができる人間は、コミュニケーション能力に関しての最上級者といえるだろう。

■真の学歴とは何か

今回のコラムで、何回か「高学歴」という言葉を使ってきた。日本は学歴社会といわれるが、その意味合いは「何を学びどんなトレーニングを受けたか」という履歴ではなく、「どんな学校に所属してきたか」という履歴である。受験勉強に疲弊して、大学入学後はろくに勉強もしなかったが、学校名に助けられて就職を果たしたという人もいるであろう。いったん就職すれば、ビジネスの遂行に必要な勉強は必須となる。技術系の企業に就職すれば、文系の人間でもテクノロジーについてある程度勉強しなければならない。理系の人間であっても、所属部署によっては企業法務や財務・税務の知識を求められることになる。

目下、テクノロジーの進化スピードが非常に早く、それが社会に大きな変化を与えている。テクノロジーの進化は企業にとって新しいビジネス機会を創出するが、それに呼応して規制当局も動くため、何が機会で何が制約となるかは常に学んでいかなくてはならない。例えばSGDs、ESGだ。今や小学校の教科書でも語られるSGDsだが、持続可能な開発目標として17の世界的目標、169の達成基準などが国連で採択されたのは2015年と、わずか6年前の話である。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取って作られた言葉である。

気候変動問題や人権問題などの世界的Challengeが顕在化している中、SGDsの観点から企業行動にESGの視点が求められるようになっている。この配慮ができていないと投資家から敬遠され、企業価値の毀損(きそん)につながるという新たなリスク領域として各企業はその対策に力を入れているところである。

このような新しい学びの領域は、企業に就職したのちに行っていた従来の学びとは根本的に異なることにお気づきだろうか。後者は、所属した企業・部署の先輩であれば誰でも知っていた内容であるが、前者は社長以下、誰も知識がなくまさに手探りで学んでいる最中である。これは若手や新入社員にもある意味大きなチャンスである。その領域を深掘りしてフロントランナーになることで、企業内のリーダーになることができる。その意味で、「私はこのようなことを学びトレーニングを積んできました」という真の「学歴」はこれから大きな武器になると思われる。

テクノロジーの進化は新しい価値観をもたらし、それが旧来の価値観と相まって世の中はますます多様になっていく。そして、そのような多様な社会における利害関係は、必然的に複雑なものとなる。そしてそんな社会は、「AnswerではなくSolutionを導き出すことができる」「インターパーソナルスキルが高くて他人にInfluenceを与えられる」「学びの姿勢を持ち続けられる」という「仕事のできる人」を待っている。仕事のできる人の要件はブレットポイントでわずかに3点。エレベーターピッチとして皆さんの心に残れば幸いである。

著者プロフィール

桂木麻也

インベストメント・バンカー。メガバンク、外資系証券会社、国内最大手投資銀行等を経て、現在は大手会計会社系アドバイザリーファームに勤務する。ASEANでの7年に及ぶ駐在経験から、クロスボーダーM&A及び、ASEAN財閥の動向について造詣が深い。慶應義塾大学経済学部卒、カリフォルニア大学ハーススクールオブビジネスMBA保有。

著書に『ASEAN企業地図 第2版』や『図解でわかるM&A入門』(いずれも翔泳社)がある。

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