「すべてカネ」日大理事長、相撲と恐怖人事で君臨

産経ニュース
日本大学会館前には報道陣が集まっていた=29日午後、東京都千代田区の日本大学会館(鴨志田拓海撮影)
日本大学会館前には報道陣が集まっていた=29日午後、東京都千代田区の日本大学会館(鴨志田拓海撮影)

東京地検特捜部に29日に所得税法違反容疑で逮捕された田中英寿容疑者(74)はアマチュア相撲で名をはせ、その人脈を生かして一介の職員から理事長まで上り詰めた。徹底した恐怖人事で反対勢力を排除するなどし、トップに君臨。常につきまとってきたカネにまつわる黒い噂に捜査のメスが入った。

田中英寿容疑者
田中英寿容疑者


29日午前。東京都内の病院に入院していた田中容疑者のもとに突然、東京地検特捜部の係官らが現れた。田中容疑者は病室に一人だったという。「病院での逮捕は強引すぎる」。突然の逮捕劇に、日大関係者はこう語った。

田中容疑者の力の源泉は名門として知られる日大相撲部にある。自身もOBで現役時代は大相撲元横綱の輪島と土俵を共にし、学生横綱として活躍。職員として日大に就職すると、相撲部の監督や総監督を務め、元大関の琴光喜ら、多くの関取を角界に送り込んだ。

日本相撲連盟副会長や国際相撲連盟会長なども歴任。スポーツ人脈を生かし、大学経営の面でも理事長にまで上り詰めた田中容疑者の象徴が、日大スポーツ関係者が多数出入りする関連会社「日本大学事業部」だ。そこで重用したのが、名門の日大アメリカンフットボール部OB、井ノ口忠男被告(64)=背任罪で起訴=だった。

進言したら左遷

田中容疑者の理事長就任後の平成22年に設立された日大事業部は、25年12月期に約7億8千万円だった売り上げが29年12月期には約69億6千万円に膨らんだ。

日大関係者は「理事長は建設などあらゆる事業に事業部をかませようとしていた」と打ち明ける。井ノ口被告は田中容疑者の意を受けて暗躍。関係者からは「業者から不当なリベートをとっている」といった声が聞かれるようになった。

10年近く前、理事だったある日大OBは、田中容疑者に井ノ口被告の行状を進言したという。だが、井ノ口被告が事業部取締役、理事と出世の階段を駆け上がる一方、このOBは地方の体育館の管理人に左遷された。「歯向かったら人生が終わる」(事業部関係者)

「価値基準はカネ」

大学に求められるコンプライアンス(法令順守)の意識も希薄だった。

田中容疑者は、妻が経営する東京都杉並区のちゃんこ料理店で、大学幹部らと頻繁に会合を開き、そこで、人事から資金決済などの重要事項が決められていたという。

ある事業部関係者は、ちゃんこ料理店で田中容疑者がその場で財布から一万円札の束を出し、事業部に入社予定の内定者に「これでうまいもんでも食っとけ」と渡すのを見た。戸惑う内定者に井ノ口被告が「理事長の金やから、ありがたく受け取っておけ」と押し込めたという。数十万円に上る飲食費の支払いが大学に回されることもあった。

昨年、田中容疑者は自宅を改修した。値段交渉を担ったのは井ノ口被告。工事を担ったのは日大の出入り業者だった。「コンプラ? 俺はそんな揚げ物はまだ食ったことないなあ」。日大関係者がコンプライアンスについて語りかけると、田中容疑者はこうけむに巻いたという。

「理事長らのすべての価値基準はカネ」と日大元幹部。大学の評議員会も理事会もその暴走を止めることはできず、背任事件の発覚後も、田中容疑者の責任を問う声は上がらなかった。

理事長逮捕に学生からも大学イメージの落ち込みを不安視する声が漏れ、法学部3年の男子学生(21)は「理事長は学生に直接教える立場ではないが、独善的な経営は変えないといけない。すぐにでも立て直してほしい」と話した。

検察幹部はいう。「日大はガバナンスが働いていない。これで変わらなかったら自浄作用ゼロだよ」(荒船清太、吉原実、石原颯)

>元理事らの供述を突破口に証拠積み上げ

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