実録・人間劇場

ニュー西成編(3) 恐ろしく暇で精神的に参る…「寄せ場労働」の実態 稼いだ金でギャンブル、そして再び寄せ場へ

大阪市西成区あいりん地区にある「あいりんセンター」で手配師に声を掛けられ、私は寄せ場と呼ばれる肉体労働者たちの寮に入った。寄せ場では「現金型」と「契約型」に雇用体系が分かれる。前者は仕事前と仕事後に寄せ場に立ち寄り、日払いの給料をもらって自宅なりドヤなり自分が逗留している場所に戻る。この場合、寮費はかからず、私が就いた「一般作業員」という職種では日給1万円だった。

後者は、寄せ場に宿泊し、三食の飯と風呂が付き、3300円が日給から抜かれる。寮長と思われる男は私に「契約型」をすすめた。

「飯を食う金も泊まる金もないんやろ。だったら契約型で好きなだけいたらええ。金が貯まったら出て行けばええし、なくなったらまた戻ってくればええ」

契約型は10日契約と30日契約があった。実際、契約が切れるたびにギャンブルなどで豪遊し、すぐに戻ってくる男は後を絶たない。一方で、30日契約を延々と繰り返し、寄せ場で15年暮らしているような男もいた。

私は肉体労働が好きではない。学生時代も体を使うアルバイトなどは意識的に避けてきた人間だ。それはただ単に辛いからである。私は無論、10日契約を選んだ。果たして、その選択は間違っていなかった。

向かった現場は兵庫県尼崎市にある「塚口さんさんタウン」。この建物を壊し、更地にするという。最初に任された仕事はバーナーで鉄筋を切る作業の補助だった。まずユンボで敷地に穴を掘る。その際、空中に舞う粉塵が近所からの苦情の元となるので私がジェット噴射のホースで水を撒き粉塵を撃ち落とす。そしてバーナーで鉄筋を切りやすくするため、私は手で鉄筋の周りを掘り続ける。軍手はすぐにずぶ濡れになり、そのうち指先がちぎれそうになった。

鉄筋を切り終えると、今度は同じホースで現場に出入りするダンプカーなどのタイヤを洗う仕事に移った。こちらも、タイヤに着いた土で住宅街に粉塵が舞わないようにするための作業だ。

一日中現場の出入り口に待機しておきながら、タイヤを洗う回数といえばせいぜい20回程度である。おそろしく暇でボサッと立っているしかないのだが、これが精神的に参る。自分と同じような底辺労働者たちは常にマウントの取り合いである。皆、自分より役に立っていない人間を探しては蔑むような目で見ることで、自分の存在価値を確認している。ダンプカーを待ちわびる私に証券会社から40日間の有休を取り、寄せ場に来ているという男が話しかける。

「君はタイヤ洗う以外の時間は何をしているの? 言っておくけど僕は休憩中だからね。こっちは君みたいに突っ立っている暇なんてないんだから」

■國友公司(くにとも・こうじ) ルポライター。1992年生まれ。栃木県出身。筑波大学芸術学群在学中からライターとして活動。著書に、大阪市西成区あいりん地区への潜入を記録した『ルポ西成七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)がある。

zakzak

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