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日本三百名山を究極のバリエーションルートで

産経ニュース

「ありがとう」。雪の日高山脈(北海道)を8泊9日で縦走する超ハードな山行の終盤に、田中陽希(ようき)さんが口にしたのは感謝の言葉。40キロの荷物を背負って厳寒の尾根をたどり、宿泊は雪洞。やっとたどりついた神威(かむい)岳の頂(いただき)での、大自然に対する感謝の言葉は唐突だったが、彼らしくもあった。

プロアドベンチャーレーサーである田中さんの一人旅「日本3百名山ひと筆書き」の様子を追うドキュメンタリー番組「グレートトラバース3」(NHKBSプレミアム)が、いよいよフィナーレを迎える。

田中さんは7年前に百名山、6年前に二百名山の「ひと筆書き」に成功。今回は「集大成」と位置付けて、すべて合わせて計三百一座の完登を目指した。百名山を目標にする山好きは多いし、三百名山をすべて登った人もいるだろう。だが、田中さんの「ひと筆書き」は、鹿児島から北海道まで、全山を歩いて(海峡はカヤックで横断して)踏破するという常識はずれのチャレンジ。コロナ禍による中断期間もあったりして、今年8月に最後の利尻岳に登頂するまで、なんと3年半以上かかっている。 「バリエーションルート」という山岳用語がある。一般的な登山道ではなく、より技術が必要だったり険しかったりする経路のこと。日々の暮らしで、わざわざ困難を選ぶ必要はないかもしれないが、山では困難こそスパイス。たとえば百名山の伊吹山は頂上近くまで車で登れるが、それは登山とは言わない。全山人力踏破は、究極のバリエーションルートだろう。

シリーズは、一座ずつ紹介する「15分版」というのも放送されていて、それもよく見ていた。忘れ難いのは、失効した運転免許証を再取得するため、岐阜からルートを変更して、自宅のある神奈川まで歩いて帰ったエピソード。「ちょっとタンマ!」と旅を区切っても誰も文句は言わないと思うが、遠回りの選択に拍手。さすが旅の達人だった。

来週27日の放送が最終回。無事に終わって本当によかった。長い間楽しませてもらいました。ありがとう。(ライター 篠原知存)

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