人とまちを生かす 下町の空き家 大阪メトロ あびこなど3駅でまちづくり

産経ニュース
改修した長屋に住む勝本一誠さん(上)と藤田昌宏さん。玄関から広がる土間に手作りの木の机を置き、大学院のオンライン授業を受けていたという=大阪市阿倍野区
改修した長屋に住む勝本一誠さん(上)と藤田昌宏さん。玄関から広がる土間に手作りの木の机を置き、大学院のオンライン授業を受けていたという=大阪市阿倍野区

駅周辺のまちづくり、丸ごと引き受けます-。大阪メトロが、大阪市南部の御堂筋線西田辺(大阪市阿倍野区)、長居(住吉区)、あびこ(同)の3駅周辺で沿線地域の活性化に取り組んでいる。いずれも乗降客が伸び悩む駅だ。駅周辺の空き家を改修して貸し出したり、飲食などの人気店情報などを冊子で発信したりと、ハード、ソフトの両面から、まちの魅力アップを目指す。

地域紙で発信

「冊子で紹介されてから遠方のお客さんも増えてめちゃくちゃうれしい。その気持ちに応えたくて味の追求を始めました」

あびこ駅近くの「山中豆腐店」の山中弘一さん(68)は満面の笑みを見せた。冊子とは、大阪メトロが発行し同駅に無料で設置された地域情報紙「あびこワンダーランド」。大阪メトロが昨年度から3駅周辺で取り組む、エリアリノベーションと呼ばれる沿線地域活性化の一環だ。

「ドル箱といわれる御堂筋線で天王寺に近い好立地なのに数年間、乗車率が伸び悩んでいる」。3駅を選んだ理由について、大阪メトロ広報の永澤良太さんはこう説明する。

西田辺駅はシャープが平成28年に本社を堺市に移転した影響などから「乗降客が、がくっと減った」。その後微増傾向にあるが、移転前の水準には戻っていない。長居、あびこの両駅も平成7年からほぼ横ばいという。

にぎわい創出

大阪メトロは事業にあたり、都市計画コンサルティング業「サルトコラボレイティヴ」(阿倍野区)に、全体の計画案を依頼。同線昭和町駅(同)周辺でまちづくりをプロデュースし、地域の魅力的な店舗を発掘するなどして活性化させた手腕に期待した。手始めに行われたのが情報紙の発行だ。

住民主体のまちづくりを目指そうと、取材、編集に地元住民を起用。編集ディレクターを務めた保坂優子さん(45)によると、近年、西田辺の主役は若いファミリー層へと移り、古民家を改装した店舗が点在する「古くて新しいまち」になった。長居公園のある長居は緑豊か、あびこは「知る人ぞ知るグルメなまち」という。冊子では、それぞれのまちの楽しみ方を伝えた。

昨年から4回発行して終了したが、保坂さんは「山中豆腐店のように頑張ってくれる店が増え、成果はあった」と話す。紹介した店舗のマップ作製や店主のトークイベントなども計画しており、情報紙をきっかけにしたにぎわいづくりを目指す。

借り主の意見

エリアリノベーションでは、空き家活用も重要な戦略の一つ。大阪メトロは家主から空き家を借りて改修費を負担し、新しい借り主に転貸する仕組みを取り入れた。3駅周辺の空き家は、長屋や古民家など借り手がつきにくい物件が多いためだ。

「長く利用してほしいので、借りる人の意見を聞いて改修内容を決めるのがポイント」と大阪メトロの永澤さんは話す。昨年の事業開始からこれまでに、2軒が改修された。

そのうちの1軒は、西田辺駅近くにある戦前に建てられたという長屋。玄関すぐに土間が広がり、間仕切りはなく全体を見渡せるつくり。壁は塗り替えられ、キッチンは洋風に変わった。やや古びた外観を一新するイメージだ。

改修では、まちづくりも研究テーマとする近畿大建築学部の「建築・都市再生デザイン研究室」と連携、この長屋では学生の提案を取り入れた。提案した2人は住宅を気に入り、半年前から住み始めている。

住人となった同大大学院生の藤田昌宏さん(22)は「僕らの暮らし方や活動をみて、後輩たちにも気持ちがつながればいいなと思う」と話す。大阪メトロは、SNSを通じた学生らの発信力にも期待を込める。

この長屋は、地域の見守り役になってもらう人を住民に想定してコンセプトを決めた。同居する同大大学院の勝本一誠さん(23)は「前庭にいると、隣人や散歩中のおばあちゃんらと自然と会話が生まれる」。庭先の触れ合いが地域活性化につながっていくか、今後の動きが楽しみだ。

全国で広がる空き家活用

今回の大阪メトロの取り組みに協力している近畿大・宮部浩幸教授によると、空き物件を活用した地域活性化の取り組みが、全国各地で活発になってきているという。

宮部教授は「更地にして新しい建物を作る再開発は家賃が高くて借り手が付かず、ここ20~30年うまくいっていない事例が目立つ」と指摘。従来型の再開発に限界を感じ、空き物件を改修して新しい場に変えていく動きが強まっているという。

空き物件では、店舗、ホテル、シェアハウスなど活用の幅が広がっている。宮部教授は「一から大きな建物をつくるよりもスピード感があり、低コストのため取り組みやすい」と今後も進んでいくとみている。(北村博子)

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