歯の骨がよみがえる「EMATの奇跡」

「細菌死滅させれば、骨がよみがえる」ひらめきで別用途の機器使用 大学病院も驚愕する「骨再生」とは

zakzak
歯を支える骨が溶けていたが(左)、EMATを受け、骨がよみがえった(右)
歯を支える骨が溶けていたが(左)、EMATを受け、骨がよみがえった(右)

とみなが歯科医院(徳島県鳴門市)の富永敏彦院長が開発したEMAT(イーマット=高周波根尖療法)は、従来の治療方法を覆し、溶けた骨を再生することを目指す。それは2005年、偶然から生まれた。吉田久志さん(仮名=30代)が「歯が痛い」と、同院を受診したのが始まりだった。

「吉田さんは虫歯にとどまらず、エックス線検査で骨が溶けていることが分かりました。虫歯による細菌がじわじわと骨を溶かしていたのです」(富永院長)

その時、ふと、「この細菌を死滅させれば、骨がよみがえるかもしれない」と富永院長はひらめいた。現在のEMATの機器とは別の高周波治療機器が医院に配備されていた。本来は電気メスとして歯肉(歯ぐき)の切開などに使うものだが、「この機器で病変の中に、さらに骨や歯の神経や血管が通る根管内に電流を流せば、細菌は死ぬかもしれない」(富永院長)。

虫歯が進行し、歯内治療(神経の治療)もうまくいかず、骨(歯槽骨)が溶けると、歯を支えることが難しくなる。重症例だと、従来の治療法では、インプラントを入れるか、ブリッジでつなぐか、または義歯(入れ歯)にするかを選ぶことになるが、いずれにせよ外科処置は避けられない。

そうした治療法ではなく、骨を再生する可能性があるEMATを打診すると、「このままでは歯を失ってしまうだけ。ぜひ試してほしい」と吉田さんもワラをもつかむ思いで応じた。

2005年2月、吉田さんは2度ほどEMATの治療を受けた。治療後、痛みなどの症状はなく、半年後に大学病院でCT(コンピューター断層撮影)検査を受けると、骨が溶けて空洞となっていたスペースに骨が再生していたことが確認された。EMAT前のCT画像と比較した検査技師から「人工骨を入れたのですか」と聞かれ、そうではなくEMATで治療したことを伝えると、技師は「そんな症例は聞いたことがない」と驚愕(きょうがく)したという。

これがEMATの成功症例の第1号となった。自分の歯と骨が残ることになった吉田さんは笑顔を見せたが、それ以上に喜んだのは富永院長だったかもしれない。

再生といえば、iPS細胞(人工多能性幹細胞)の開発で京都大学の山中伸弥教授が2012年にノーベル医学・生理学賞を受賞した。iPS細胞による治療や研究との単純比較は難しいものの、かなり早い段階で富永院長は歯科領域で骨再生を現実のものにしていたことになる。

EMATの原理は、「高周波電流で病変内にある細菌を死滅させる。細菌が消え、骨芽細胞が活性化し、自己再生能力によって骨が再生される」(富永院長)というものだ。

「正直言えば、吉田さんの治療はあれほどうまくいくとは思っていませんでした。治療の成功は私にとっても驚きで、その後、他の患者さんでも次々にうまくいき、これは本気でEMATに取り組もうと思いました」(富永院長)

EMATについては大学との共同研究などを行って科学的データを蓄積。今年までの16年間に、1600症例を数えた。重症度や個人差で治療成績に若干差異はあるが、成功率は95%に達した。第1号の吉田さんの歯や骨は現在も問題なく経過しているという。 (取材・佐々木正志郎)

■富永敏彦(とみなが・としひこ) 1991年、徳島大学歯学部卒。2000年、医療法人とみなが歯科医院(徳島県鳴門市)開院、院長・理事長に就任。2005年、EMAT(高周波根尖療法)を開発。国際電磁歯科学研究会会長、米国歯内療法学会国際会員、日本歯内療法学会医療合理化委員・専門医、日本歯内療法学会指導医。徳島大学歯学博士。55歳。

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