地方行政から社会保障まで 風呂敷広げるデジタル臨調

産経ニュース
デジタル臨時行政調査会で発言する岸田文雄首相。左は牧島かれんデジタル相=16日午後、首相官邸(矢島康弘撮影)
デジタル臨時行政調査会で発言する岸田文雄首相。左は牧島かれんデジタル相=16日午後、首相官邸(矢島康弘撮影)

岸田文雄首相肝いりの「デジタル臨時行政調査会(臨調)」が16日、動き出した。新型コロナウイルス禍で浮き彫りになった行政のデジタル化の遅れを規制改革、行政改革と一体化で巻き返すのが狙いだが、対象は地方行政の効率化から社会保障の立て直しまで多岐に及び、大風呂敷を広げた感は否めない。

「国民がデジタルの活用を実感するには社会をデジタル時代にあったものに作り替える必要がある」

岸田首相は16日に開かれた初会合でこう訴えた。

コロナ禍では感染者の行動履歴や医療機関の実態把握で国と地方のデータ連携に目詰まりが生じ、自治体の業務負担が増して対応が後手に回った。10万円の特別定額給付金もオンライン手続きが実質的に機能せず、支給遅れが批判された。

デジタル臨調が目指す社会では、行政手続きは役場に行かずに完結するオンライン手続きを原則とする。サービスの提供を優先、不具合が発生する度に改善していくIT業界で主流の手法を取り入れ、行政を抜本的に変える絵姿を描く。

政府が成功例として強調するのが菅義偉(すがよしひで)前政権で進めた行政手続きの〝脱はんこ〟化だ。押印するためだけに出勤するなど、テレワークを阻害する一因とされた「はんこ文化」を一掃するため、政府は約50の法律を一括で改正し、行政手続きの9割以上で押印を廃止した。

デジタル臨調は、首相と同じ自民党宏池会出身の池田勇人、鈴木善幸両元首相が立ち上げた臨調をモデルにしている。経団連会長を務めた土光敏夫氏をトップに昭和56年に発足した第2次臨調は「土光臨調」とも呼ばれ、その答申は国鉄の分割民営化などの大改革につながった。

デジタル臨調も衰退する地方や社会保障制度を立て直し、新産業の創出も促すデジタル分野の大改革を狙う。ただ、掲げる目標が大きければ大きいほど、地方や中小企業、高齢者など、デジタルに不慣れな人々が置き去りにされる懸念は増す。社会全体のデジタル力を底上げする包容力のある議論も求められる。(高木克聡)

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