先日、ある週刊誌から電話の取材を受けた。今、日本で販売されている最大規模の新築マンションについて、今後の販売がどうなるのか…といったようなことをたずねられた。
その記者は、あらかじめJV売主の幹事企業にも取材を行っていた。
私が悲観的な見通しを語ると、その記者は「担当者はかなり好調で次期販売で1000戸に近い戸数を出すと言ってましたが」と話した。
これには苦笑するしかなかった。新築マンションの売主は、自社が開発分譲中の物件を「販売不振です」などと言うわけがない。そんなことを報道されたら売れなくなる。だからどれだけ売れていない物件でも「販売は好調です」と言うものだ。
新築マンションの開発・分譲事業では、一般的に建物の完成と購入者の引き渡しまでに全戸の売買契約が終わっているのが理想である。なぜなら、土地の購入や建築費をまかなうために銀行から借り入れた資金を最短で返済できるからだ。
だから、ほとんどのデベロッパーは建物が完成するまでに全住戸が売約済みである状態を目指す。私がコメントを求められた最大規模のマンションについても、建物が完成して契約者に引き渡される2年半先までに全戸が完売していることが理想ではある。
ただし、私から見るとその物件が建物完成までに完売する可能性はほぼない。むしろ建物完成後も長らく完売を目指した「敗戦処理」が続きそうだ。
それでも、売主企業の広報担当はメディアの取材に「好調です」と言うだろう。
日本人は「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という民族性を持っている。マンションで言えば「他の人も買っているから」というのが購入への強力な安心材料になる。逆に「他の人が買っていない」不人気な物件は、買うのが怖くなる。