お薬手帳を持っているのと持っていないのとでは、医療費が違います。持っているほうが40円安くなります(3割負担の場合)。具体的には「薬剤服用歴管理指導料」が安くなります。「薬剤服用歴管理指導料」とは、薬剤師が患者さんに対して提供する薬の情報やアドバイスの料金。通常は570円ですが、お薬手帳の提示で430円になり、3割負担の場合なら差額の3分の1、40円が安くなるのです。
ただし、手帳を持っていても安くならない場合もあります。かかりつけの病院に通い、薬局もいつも決まった薬局を使っていたとしても、たまになにかの都合で別の薬局に行くケース。この場合は、安くなりません。
現在、お薬手帳は電子化が進んでいます。大手調剤薬局チェーンでは、独自で専用アプリを開発し、スマホで管理できるサービスを展開しています。調剤明細にはQRコードが印刷されています。このコードを読み取るだけで、アプリ内に処方箋の内容が記録されます。お薬手帳アプリは、紙のお薬手帳と同じように活用でき、同様に「薬剤服用歴管理指導料」も安くなります。服薬アラームや処方箋予約などの機能も充実しています。
最近のお薬手帳アプリは、健康管理機能がついたものや、家族の情報まで一緒に管理できるものもあります。また、診療情報や検査情報、お薬手帳などをまとめ、患者がいつでも内容を確認できる「診療記録アプリ」も登場しています。
本来なら、医療情報に関しては、すべてを一元化してデジタル管理すべきですが、日本はまだそこまでいっていません。いずれにしても、現行のアプリでも処方箋予約機能を使えば、写真撮影した処方箋を事前に送信しておくことで待ち時間を短縮できるなど、非常に便利です。 =おわり 【15日(月)から「歯の骨がよみがえる EMATの奇跡」を連載します】
■富家孝(ふけ・たかし) 医師、ジャーナリスト。1972年東京慈恵会医科大学卒業。病院経営、日本女子体育大学助教授、新日本プロレスリングドクターなど経験。「不要なクスリ 無用な手術」(講談社)ほか著書計67冊。