勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(348)

仰木近鉄 逆転優勝へ「選手を信じる」

産経ニュース
ベンチで中西ヘッドコーチ(右)と談笑する近鉄の仰木監督=昭和63年10月14日、藤井寺球場
ベンチで中西ヘッドコーチ(右)と談笑する近鉄の仰木監督=昭和63年10月14日、藤井寺球場

■勇者の物語(347)

昭和63年のペナントレース、セ・リーグは就任2年目の星野中日が2位の巨人に12ゲーム差をつけ、独走で6年ぶりの優勝。パ・リーグは1年目の仰木近鉄が西武との激しい死闘を演じていた。

近鉄は10月18日、ロッテとの3連戦に臨んだ。すでに首位の西武は全日程を終了しゲーム差は「1」。近鉄が逆転優勝するには残り3試合を全勝するしかなかった。

川崎球場に乗り込んだ近鉄ナインには悲壮感はなかった。実は近鉄は前夜の17日、西宮球場での阪急戦に1―2で敗れていた。近鉄ナインは翌日の移動のため、京都都ホテルに向かった。西宮球場からホテルまでのバス移動。お通夜のように暗いムードを打ち破ったのが仰木監督のひと言だった。

「おい、大石、何かやれ!」

「えっ、歌ですか?」

躊躇(ちゅうちょ)する大石。すると後ろから「ボクが歌います!」と立ち上がったのが、59年、近大からドラフト1位で入団した佐々木修だった。

「飛ぶ雲、飛ぶ声、飛ぶボール~」。佐々木の歌う『近鉄バファローズの歌』に合わせて選手たちも歌い始め、いつしか大合唱。歌が終わると仰木監督は打撃投手の依田栄二を指名した。

「依田、あれ、やれ!」「はい!」。依田は叫んだ。「みなさん、明日からの3連戦、全勝目指して、一気コール。それ!」「一気、一気」。バスの中はエネルギーが満ちあふれたという。

10月18日 川崎球場

近 鉄 213 006 000=12

ロッテ 000 001 100=2

(勝)山崎13勝7敗 〔敗〕荘13勝14敗

(本)ブライアント(32)(荘)(33)(伊藤優)吹石①(平沼)

試合は主砲ブライアントのバットが炸裂(さくれつ)した。一回1死一塁で荘のシュートを左中間スタンドに叩き込めば、六回1死三塁でとどめの33号2ラン。これで西武とのゲーム差は「0・5」。残り2試合、19日のダブルヘッダーに勝てば…。

「ペナントレースの最終戦までこんなゲームを続けられる。すばらしいことだ。私は選手を信じてやってきた。明日も信じて戦うだけだ」

こうして、球界でいまでも語り継がれている『近鉄10・19の悲劇』の幕が開くのである。(敬称略)

■勇者の物語(349)


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