風街とデラシネ~作詞家・松本隆の50年を読み解く

森山良子、加山雄三が唯一依頼した“知られざる名盤” ヒット曲だけでは見えてこない「アルバム作家」松本隆の全貌

 もう1枚、60年に及ぶキャリアで1人の作詞家が書き下ろした唯一のオリジナルアルバムが78年の加山雄三の『加山雄三通り』だった。

 本格的な音楽活動を始めてからは作詞家は岩谷時子としか組んでこなかった加山雄三にとっての初の試み。それまではシングルヒットを中心にしたものが多かった中で全曲がひとつのテーマに沿ったコンセプトアルバム。その中の『湘南ひき潮』はステージで欠かせない曲になっている。

 「松本君は茅ヶ崎の加山邸に通い光進丸に乗り彼の話を聞いて書き上げた」とプロデューサーの新田和長が語った。取材を重ねて書く。詩人・松本隆の中でも数少ないノンフィクション作品だった。

 総曲数約2100曲。ナンバー1ヒット50曲以上、トップ10ヒット150曲以上。でも、その時代には誰も試みていなかった「知られざる名盤」が何枚もある。

 ■田家秀樹(たけ・ひでき) 1946年、千葉県生まれ。放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、ラジオ番組パーソナリティー。著書に『読むJ-POP 1946~2004:私的全史』『陽のあたる場所・浜田省吾ストーリー』『ビートルズが教えてくれた』など多数。著書『風街とデラシネ 作詞家・松本隆の50年』(KADOKAWA)と、同名の2枚組CD(ソニーミュージック・ダイレクト)が同時発売されたばかり。

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