チーム学校

学校医 体の異変を察知、成長支える医薬のプロ

産経ニュース

「校医さん」。親しみを込めてそう呼ばれることもある学校医は、担当する学校の児童、生徒の健康を守る「縁の下の力持ち」というべき存在だ。内科や眼科、耳鼻科、歯科などの健康診断では、異常がないかを注意深く調べ、必要に応じて専門医につなぐ。子供たちと接する機会は限られるが、学校で感染症が流行した際や学校保健委員会の場では、専門的な立場から助言をする。学校医でなくても学校や地域と連携した取り組みを続ける医師や、定期的に学校に足を運び生徒からの健康相談に応じる学校医もいる。

10月中旬の平日午前8時ごろ。堺市西区にある大阪府営住宅の集会所から、朝食を終えた小学生約40人が、満足そうな表情で次々と出てきた。新しい歯ブラシの封を開けて歯を磨き、仮設の手洗い場で口をゆすぐ。

その先で、行列になった子供たちの口の中を「あーん」とのぞき込むのは歯科医の枡元直人さん(38)だ。「OK、きれい」「小さい虫歯があるから、歯医者行っておいで」。手鏡を渡され歯の状態を説明された男児は、枡元さんの顔を見てうなずいた。子供たちは保護者への連絡の紙をもらい、近くの市立福泉東小学校に向かった。

子供食堂での朝食を終えた児童は一人ずつ、歯科医の枡元直人さんに歯をチェックしてもらっていた=堺市西区(彦野公太朗撮影)
子供食堂での朝食を終えた児童は一人ずつ、歯科医の枡元直人さんに歯をチェックしてもらっていた=堺市西区(彦野公太朗撮影)

同区内の歯科医院で働く枡元さんが平成29年から、地元の団体が月に1回開く子供食堂に合わせてボランティアで行っている。小学校の歯科健診は年1回しかないため、より短い間隔でチェックして虫歯を早期に発見する。注意を要するのは低学年だといい、「永久歯が生えたタイミングが虫歯になりやすい」と枡元さん。菌が作り出す酸に弱いためだという。

虫歯があるかどうかは、親の意識や歯磨き習慣の有無といった家庭環境に左右される。歯科医として数多くの患者と向き合ってきた経験から、枡元さんは「中には、子供の口の中の状態に関心を持っていない家庭もある」と話した。

子供食堂の日は同小の教諭らも様子を見守る。枡元さんの取り組みで児童の虫歯が減ったといい、由良博史校長は「専門家に見てもらえるのはありがたい」と実感を込めた。

放課後の健康相談

学校に関わる医療の専門家は、歯科医のほか医師と薬剤師で「学校三師」と呼ばれる。学校医は校内の健康問題を協議する学校保健委員会の一員でもあり、積極的に学校の中に入っていく例もある。

岐阜県恵那市の小児科医、蜂谷明子(めいこ)さんは学校医として市内の3校を担当し、30年以上になる。地域の学校で放課後に健康相談を開催し、生徒や保護者の悩みに対応してきた。

きっかけは15年近く前の小学生の女児とのやり取りだ。朝食欠食を指摘されていた女児に「お母さんが起きてくれないなら、冷蔵庫のチーズを一つ口に入れるだけでいいよ」と声をかけると、思いもよらない返事があった。「冷蔵庫に何も入ってないの」。言葉を失ったという。

養護教諭と協力し、平成23年に中学校の保健室で放課後の健康相談を始めた。1学期に1度、1人15~30分をかけて向き合う。事前に養護教諭が生徒の家庭環境や体調を詳しく調べたメモを参考に、健康状態を聞き取っていく。

病院に行けない子供たち

「医者と話すの初めてだわ」。最初の相談者となった中学3年の男子生徒は開口一番、そう言った。授業妨害が問題視されていたその男子生徒は、一度も病院を受診したことがなかったという。同市には子供医療費の助成制度があり、15歳までは窓口医療費は無料だ。受診しやすいと思っていたが、現実は違った。

「親に言わないでね」「頼んでも病院に連れて行ってもらえなかった。本当はお医者さんにかかってみたかった」。子供たちは口々に打ち明けた。

受診しない理由は経済的な問題だけではない。親に時間がない、意識が向かない-。「周囲から体調を気にかけてもらえるから、不調を訴える力や自分を慈しむ力が養われる。それがない子供がこれほどいたとは」

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