海運に革命「帆神」の一代記 玉岡かおるさん新著

産経ニュース
「帆神」の刊行に合わせ、工楽松右衛門の旧宅で会見した玉岡かおるさん。 「松右衛門さんが公益を重んじていたところは同じ播州人としてうれしい」と話す=兵庫県高砂市(中島高幸撮影)
「帆神」の刊行に合わせ、工楽松右衛門の旧宅で会見した玉岡かおるさん。 「松右衛門さんが公益を重んじていたところは同じ播州人としてうれしい」と話す=兵庫県高砂市(中島高幸撮影)

海商・工楽松右衛門を描く

作家の玉岡かおるさんが、江戸時代後期の海運業の発展に貢献した兵庫・高砂出身の海商、工楽松右衛門(くらく・まつえもん)を描いた「帆神(ほしん) 北前船を馳(は)せた男・工楽松右衛門」(新潮社)を刊行した。海商として活躍しながら、帆布の性能を飛躍的に向上させた「松右衛門帆」を開発、海運業に革命をもたらした男の一代記だ。女性の生き方に光を当てる物語を書き続けてきた玉岡さんにとり、男性を主人公にした作品は初めて。女性の登場人物の視点を取り入れ、人間味豊かに浮かび上がらせた。

画期的な帆

松右衛門(1743~1812年)は漁師から身を起こし、兵庫津(ひょうごのつ、現・神戸市兵庫区)の海商へと出世して北前船の運航に携わり、大型で破れにくい「松右衛門帆」を発明した。松右衛門は製法を独占しなかったため全国に広がり、命懸けだった航海の安全性が高まり速度も上がった。江戸期の海運を一変させ、さらに幕府や藩の依頼で択捉や箱館などで港を建設。功績により幕府から「工楽」の姓を与えられた。

兵庫県加古川市に住む玉岡さんは、約40年前に夫の出身地の高砂市に8年ほど住んだことがあり、松右衛門の存在は知っていた。執筆のきっかけは約5年前。高砂市観光交流ビューローから松右衛門を題材にした作品化を依頼された。

ただ、当初は乗り気ではなかった。それは、神戸の商社の女性トップを描いた「お家さん」(新潮社)や徳川家康の孫娘で豊臣秀頼に嫁いだ千姫が主人公の「姫君の賦(ふ) 千姫流流」(PHP研究所)といった作品で女性を描き続けてきたからで、「松右衛門さんは守備範囲ではない」と感じたという。

しかしその後、松右衛門の子孫が高砂市に寄贈した「工楽松右衛門旧宅」を次女と訪れるなどし、功績の大きさに対して知名度が低い松右衛門を「歴史の波に埋もれさせてはいけない」と一念発起した。

人間味豊かに

松右衛門の事績を調べるため、神戸や新潟などゆかりの地を訪れ取材したが、研究が十分進んでおらず資料は乏しかった。「分からないことは想像でつないで書くのが私の仕事」と玉岡さん。十分暮らせていた高砂から兵庫津へなぜ移ったのか。資料は残っていないというが、説得力ある考察で物語を紡いでいった。

活躍したのは男だけではない。松右衛門帆を織っていたのは女性だったはずで、多くの女性たちも偉業を支えてきたと玉岡さんは推測する。「偉人の物語ではあるが、偉人というだけで終わらせたくなかった。共に働いていた女性たちがいたはず」。章ごとに4人の女性の視点を取り入れ、失敗したり失恋したりと、人間味豊かな松右衛門像を浮かび上がらせた。

作品には、淡路出身の海商で日露の紛争解決に尽力した高田屋嘉兵衛や、町人学者として知られる山片蟠桃(やまがた・ばんとう)も登場。嘉兵衛は司馬遼太郎さんの長編小説「菜の花の沖」の主人公で知られ、同作には松右衛門も登場している。玉岡さんは「松右衛門帆がなければ、その後の嘉兵衛の活躍もなかったはず」と功績を強調した。

「公益」と松右衛門の魅力

作品を書き上げて見える松右衛門の魅力について、玉岡さんは「画期的な帆布を発明したのに、独占することなく、船乗りが安全に航海できたらいいという公益を考えていた。美徳であり、同じ播州人としてうれしい」と振り返った。

松右衛門の物語を通じて伝えたいことは。

「海に囲まれた海運国でありながら、私たち現代人は海運の歴史を知らない。物だけでなく文化や交流も運ぶという物流の大切さを伝えてくれる。北国の人々にとっては沖に松右衛門帆が見えると、生活を豊かにする物資を積んだ希望の船に見えた。松右衛門帆の重要さがどれほどのものだったか、想像力をかきたてるものになれば」(中島高幸)

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