生きもの好〝紀〟心

キテンハタ報告の顛末④「査読」という戦いの末に

産経ニュース
出版されたキテンハタの報告論文。著者名に脇本総志さんの名前が記載されている。(https://www.museum.kagoshima-u.ac.jp/ichthy/INHFJ_2020_004_022.pdf)より転載=国島大河学芸員提供
出版されたキテンハタの報告論文。著者名に脇本総志さんの名前が記載されている。(https://www.museum.kagoshima-u.ac.jp/ichthy/INHFJ_2020_004_022.pdf)より転載=国島大河学芸員提供

これまで、現在は和歌山県立向陽中3年の脇本総志さん(15)が、キテンハタの標本を観察しながら体の形や色を文章として記載し、論文の原稿を作成していく様子をお伝えしました。そうしてキテンハタを採集してから約2カ月後の10月下旬、原稿がようやく完成しました。しかし、ここからはまた別の戦いが始まるのです。

これまで紹介したように、いわゆる「論文」というのは学術雑誌に掲載されている記事のこと。原稿ができてから雑誌に投稿すればすぐ載せてくれるかといえば、実はそうではありません。

雑誌の中には、「査読(さどく)」と呼ばれる専門家によるチェックを受けなければならないものもあります。つまり、投稿した原稿について「この種類と比べてみたら?」とか、「この図はわかりにくい!」とか、専門家からさまざまなコメントをもらいます。

そして、頂いたコメントに対して一つ一つ返答を考えながら原稿を改善していきます。これがとても大変な作業です。厳しいコメントを受けることもあり、憂鬱な気持ちになりながら原稿と向き合い、内容を大きく変更しなければならないことも多々あります。

さらに、不備が多かったりコメントに答えきれなかったりすると、「リジェクト」つまり掲載拒否されてしまい、他の雑誌に投稿し直さなければならないことも。一方、こうした査読を経ずに編集者のチェックだけで掲載される雑誌もありますが、査読を通過した論文は、専門家による「チェック」を受けているため、より信頼性の高いものだともいえます。

話は戻りますが、いよいよキテンハタの原稿を投稿することになりました。今回投稿したのは、鹿児島大の総合研究博物館が発行する査読付きオンラインジャーナル「ICHTHY(イクチー)-Natural History of Fishes of Japan」です。

この雑誌の特徴は、そのスピーディーさにあります。多くの場合、原稿を投稿してから査読を経て修正、受理、掲載までは速くても半年、長い場合は1年以上かかることもあります。しかし同誌は、オンライン上で公表することや査読の期間を3日以内と短くすることにより、投稿から掲載までの時間が圧倒的に速いのです。

さすがに編集者と査読のやり取りを脇本さんがするのは厳しいので、私の方で投稿を進めました。その後、査読を受け、脇本さんと相談しながら図や文章を改善し、無事受理されることとなりました。なお、この論文は誰でも無料で閲覧できますので、ぜひ検索してごらんください(つづく)。(和歌山県立自然博物館学芸員 国島大河)

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