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マタニティー専門鍼灸院 「妊婦にハリ」のタブー超え 妊活、産後もケア

産経ニュース
29週目の妊婦にハリを打つ藤原亜季さん=いずれも東京都中央区の「天使のたまご」本院(重松明子撮影)
29週目の妊婦にハリを打つ藤原亜季さん=いずれも東京都中央区の「天使のたまご」本院(重松明子撮影)

日本初のマタニティー鍼灸(しんきゅう)院「天使のたまご」が東京・銀座に開業して15周年を迎えた。今でこそ東京を中心に8院、年間延べ8400人が来院する人気だが、当初は「妊婦にハリ」への理解を得るのに苦労した。原点は、藤原亜季代表(43)が学生時代に体験した「まさかの妊娠」。開業後は鍼灸治療の科学的研究を進め、節目の今年、医学博士の学位取得とともに、16年ぶりに第2子を出産した。自分の体を「教材」とする半生は、生命力にあふれて波瀾(はらん)万丈である。

癒やされ気持ちも前向きに

肩こり、腰痛、自律神経の乱れ、不眠、つわり…。妊娠中の不調はおびただしい。辛くても仕事を休みにくく、晩産化が進むキャリア女性はなおさらだ。

東京都中央区の「天使のたまご」本院を訪れると、もぐさとアロマの香りが満ちた個室で、妊娠29週目の女性(42)が妊婦専用マットにうつぶせになっていた。藤原さんが全身をマッサージしながら不調の部位を確認。「三陰交」「経絡」などのツボに鍼をトントンと打ってゆく。

60分の施術を終えた女性は、「胸やけがすっきりした。腰の痛み、足のだるさも取れてすごくラク。癒やされて気持ちも前向きになれた」。女性の職業は助産師でお産のプロだが、不妊治療で何度も心が折れ、インターネットで調べて同院にたどり着いたという。

利用者の内訳は妊婦5割、鬱に陥りがちな産後3割、妊活中2割。それだけ、妊娠前後のケアが求められているのだ。

「全身の血行を促進し副交感神経優位に導くことで痛みや疲労、ストレスを緩和。骨盤内の血流を改善することで妊娠しやすい体をつくり、妊娠中の苦痛を軽減します」と藤原さん。

薬が飲めない妊娠期こそ

鍼灸に関心を持ったのは、進路に迷っていた大学卒業時。アジア諸国を一人旅し、東洋医学の流れをくむ各地の自然療法に感銘を受けた。帰国後、アロマセラピーサロンで働き、24歳で鍼灸専門学校に入学。勉強に励んでいた最終学年の春、予期せぬ妊娠をした。相手と結婚したが関係はギクシャク。「感情の起伏が激しくなり、妊娠生活はストレスだらけ。体のあちこちが痛い」。駆け込んだ鍼灸院では、「妊婦だから」と門前払いされた。

そこで夢が明確になる。

「薬が飲めない妊娠期こそ、自然治癒力を高める鍼灸治療が向いているはず。そうだ。私が妊婦のための鍼灸院をつくろう」

身重の体で通学。講師に相談して体にハリを打ってもらい、効果を確信する。

平成17年11月に長女を出産。翌年2月には鍼灸師の国家試験に合格。その年の8月に開業した。

数年は赤字が続くが、口コミで評判が広がり、〝ママタレ〟芸能人も多数訪れるサロンへと成長した。最初の夫とは離婚し、シングルマザーとして奮闘するなか、40歳目前で現在の夫と出会い2人目を切望。

流産や子宮外妊娠、卵管切除を乗り越えて今年、長男を産んだ。「鍼灸のケアで精神が安定し、幸せなお産ができた。この体験を、みんなに還元したい」。鍼灸治療の研究を深め、9月に昭和大大学院で医学博士を取得。今月、臨床研究に協力してもらう妊婦100人の募集を始めた。鍼灸の保険適用には医師の同意書が必要なため、エビデンスを示すことで医療側の理解を得て連携を進めてゆく。

取材後。長男をあやしていた藤原さんの夫、産科医の日下剛さん(54)に声をかけられた。「私たち人間は古くから大家族制度のもとで、子供を育ててきた。妊産婦が孤独に頑張る現代の形には、無理があります。生殖能力を終えた後もこれほど長く生きる動物は人間だけ。みんなに何かしらの役割があるはず」

少子化問題の解決には、妊婦へのいたわりが不可欠だ。政策やサービスの課題だけではない。例えば、通勤電車で目にする妊婦マークの人が、ちゃんと席を譲られているだろうか?

持続可能な人類の未来のために、それぞれができるやさしさを行動で示したい。(重松明子)

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