首相肝いり「賃上げ税制」 衆院選受け強化へ

産経ニュース
会見する自民党総裁・岸田文雄首相=1日午後、東京・永田町の自民党本部(矢島康弘撮影)
会見する自民党総裁・岸田文雄首相=1日午後、東京・永田町の自民党本部(矢島康弘撮影)

自民党が衆院選で安定多数を維持し岸田文雄首相の政権基盤が安定したことを受け、年末に向けた令和4年度税制改正協議は首相肝煎りの賃上げ税制(所得拡大促進税制)の強化が焦点になる。平成25年度に創設されながら十分成果を上げられていない制度でもあり、実効性のある見直しができるが問われそうだ。

首相は1日の記者会見で「賃上げ税制の抜本的強化や、補助金の要件として賃上げを求めることで、企業による賃上げを強力に促していく」と述べ、税制などの優遇措置で賃上げを促進していく考えを強調した。

所得拡大促進税制は、自民、公明両党がともに衆院選公約で推進を掲げた。現行制度では、中小企業が支払う給与総額が前年度比1・5%以上増えれば、増加分の15%を法人税から差し引く。首相は減税率の引き上げなどを通じて企業に一層の賃上げを促し、消費を刺激することで、政権が掲げる成長と分配の好循環に結び付けたい考えを示す。

ただ、制度自体は安倍晋三政権時に導入されてから既に10年弱が経過したが、日本の平均賃金は30年近く横ばいで、目立った効果が出ていない。基本給は一度上げれば下げにくく、賃金に加え年金や社会保険料の会社負担も増すため、一時的な税制支援だけで踏み切るのは難しい側面もある。

東京財団政策研究所の森信茂樹研究主幹は、制度拡充ありきではなく、対象企業への聞き取りなどを通じ「実際に活用してもらえるのか事前検証する取り組みが不可欠」だと指摘する。

成長と分配の好循環をめぐっては、富裕層増税となる金融所得課税の見直しも注目点だ。首相は検討を当面先送りする考えを示しているが、衆院選での勝利を踏まえ、5年度改正の課題として4年度税制改正大綱に書き込む可能性がある。

一方、4年度改正では、実際に支払う利息より減税額のほうが大きくなるという〝制度の穴〟がある住宅ローン減税の見直しも課題だ。また、新型コロナウイルス対策で土地の評価額が上がっても税額を据え置いた固定資産税の特例措置を延長するかといった議論も予想される。(鬼丸明士)

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