異才の狂言師・野村萬斎が越えるボーダー

産経ニュース
狂言だけに留まらず、現代劇や映像の世界でも存在感を際立たせる野村萬斎
狂言だけに留まらず、現代劇や映像の世界でも存在感を際立たせる野村萬斎

東洋と西洋、古典と現代のボーダーを越え、マルチに活躍する狂言師、野村萬斎。狂言のおもしろさ、深さ、可能性を追求し続ける活動はとどまるところを知らない。精力的に舞台に立ち、映画やテレビドラマなど映像の世界でも存在感を際立たせる。そんな日本文化を担う「異才」の芯に、常にあるのは文化の底流にある思想と、未来を見つめる深い眼差しだ。

「外」から見る日本人

今年、父で師でもある人間国宝、野村万作が90歳を迎えた。

「父が到達した芸境は、芸道の根幹を見つめ、ひたむきに生きてきた結果。ぜひみなさまにいまの父の舞台を見ていただきたい」

今年、90歳の卒寿を迎えた人間国宝、野村万作(右)と長男の野村萬斎
今年、90歳の卒寿を迎えた人間国宝、野村万作(右)と長男の野村萬斎

そう言って、ふっと「私は父とは違う。ひたむきというより、まず疑って、それから創造していくタイプ」と笑った。

スマートで知的な風貌も相まって、若い頃から、あふれる才能で注目を浴びてきた。20代の頃、ロンドンに1年間演劇留学し、日本の文化を外から見る目を培った。

帰国後は、シェークスピア劇を狂言の手法を取り入れて作り上げた「国盗人(くにぬすびと)」や「マクベス」など野心的な作品を次々と発信して伝統芸能界のスターとなった。それは、日本の古典とは何かを問い続け、狂言の可能性を開いてきた日々でもあった。

「イギリスに行ったことは大きかった。日本の文化をグローバルにとらえ、日本人のアイデンティティーを考えることができた」と振り返る。

日本ならではのグローバリズム

〈このあたりの者でござる〉-狂言の舞台で登場人物が最初に発するせりふ。萬斎はこの言葉に、日本ならではのグローバリズムを見いだすという。

「日本は森羅万象すべてのものに神が宿るという思想。生き物にも自然にもすべてのものに尊厳を持ち、すべてが平等であるということ。だからこそ、どこの誰と特定しない『このあたりの者でござる』には、日本のグローバリズムの精神が生きている。芸能にそういう思想を持ち込んだ日本文化の本質を、もっと知っていただきたい」

若い頃から、狂言を広めるためにさまざまな活動を行ってきた。だが、「まだまだ砂に水をまくようなところもある」と現状に満足してはいない。

伝統と探究

「日本の伝統文化は、どうしても、井の中の蛙というか、閉塞(へいそく)感が否めない。なんとか打ち破っていきたい」と力を込める。

多彩なジャンルで活動するのもそういう思いから。現在は、テレビドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日/ABCテレビ系)に、完璧主義者の内科部長、蜂須賀(はちすか)隆太郎役で出演している。

「いろんな俳優さんと相まみえるのは刺激的。それにあれだけの高視聴率のお化け番組。なぜ支持されているのか、探究心もある」

野村萬斎を中心に、さまざまな世界が繋がりあう。芯にある強固な意志に、日本文化の未来を見る。

「これからもジャンルを横断する活動をしていきたい。それが私の天命です」

野村萬斎主宰「ござる乃座」京都公演

野村萬斎が主宰する「ござる乃座」の京都公演が11月7日午後2時、京都市左京区の京都観世会館で開かれる。今年は野村万作卒寿記念と銘打ち、万作が孫の野村裕基と共演する「孫聟(まごむこ)」、萬斎は太郎冠者(たろうかじゃ)に扮して「縄綯(なわない)」を上演。親子孫がそれぞれ年代にふさわしい小舞(こまい)を披露。裕基が「鮒(ふな)」、萬斎は「鉄輪(かなわ)」、万作は高い技術が要求される「住吉」を勤める。問い合わせは万作の会(03-5981-9778)。


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