日本ペイントホールディングス(HD)が海外の塗料メーカーに対するM&A(企業の合併・買収)戦略にアクセルを踏んでいる。今月、欧州第4位の建築用塗料メーカーである仏クロモロジーホールディングを11億5200万ユーロ(約1510億円)で買収すると発表。中国に次ぐ世界第2位の塗料市場である欧州を攻める橋頭堡(きょうとうほ)とする。積極的なM&Aで、世界の塗料市場での存在感向上を図る。
「優れたブランドを持ち、EPS(1株当たり利益)への貢献も1年目から見込まれる優良な案件だ」。日本ペイントHDの若月雄一郎共同社長は10月20日に開いたオンライン記者会見の冒頭で、クロモロジーの買収についてこう自信を示した。
今回の買収は、2019(令和元)年に傘下に収めた豪州のデュラックスグループを通じて実施し、22年上期中に全株式を取得する。日本ペイントHDによる欧州の塗料メーカーの買収は、19年のベテックボイヤ(トルコ)以来だ。
クロモロジーは06年設立で、フランスを中心に西欧や北アフリカで事業を展開。フランスやイタリア、スペイン、ポルトガルでは、建築用塗料市場で上位3社に入っている。20年12月期の売上高は6億2800万ユーロ(約823億円)で、21年12月期は6億8600万ユーロを予想している。
「この会社(クロモロジー)自体の潜在力が非常に高く、魅力があり、われわれのプラットフォーム(基盤)に乗ることで十分に成長を遂げられる」。若月氏は会見でこう力を込めた。
日本ペイントHDは近年、海外の塗料メーカーに対するM&Aを継続的に手掛けてきた。17年に米国のダン・エドワーズを約687億円で買収し、米国の建築用塗料市場での足掛かりを構築。19年にはトルコのベテックボイヤを約281億円、豪州のデュラックスを約2917億円で傘下に収めた。国内市場は大きな伸びが期待しづらい中、中国をはじめとする海外市場に力を入れ、20年12月期は売上収益(売上高に相当)に占める海外の比率が約8割に達した。
20年12月期は国内が減収減益となる中、M&Aを積み重ねて商圏を広げた海外が引っ張り、売上収益は7811億円、営業利益は869億円と、ともに過去最高を更新。21年12月期は売上収益1兆円を予想しており、「1兆円企業」の仲間入りを視野に入れている。
日本ペイントHDはアジア太平洋地域で首位の塗料メーカーだが、全世界では第4位。同社が拡大を図る建築用などの汎用(はんよう)塗料のメーカーに対するM&Aをめぐって、同社幹部は今年3月の会見で「事業がよく理解できることが中核的なターゲットになる。むやみに買うことはしない」と述べた。M&Aの巧拙も成長の鍵を握る。(森田晶宏)