日本美女目録 新珠三千代という女優

瀕死の壮絶ラストシーンが評判 もとは人形浄瑠璃だが現代にも通じるストーリー 女殺し油地獄(1957年)

 『女殺し油地獄』(堀川弘通監督)は東宝の作品だが、人気の演目だけにこれまでに何作も作られている。ただし最初から人気だったわけではない。

 もとは近松門左衛門が作った人形浄瑠璃がもとだが、初演された1721(享保6)年はまったくの不評だったという。明治になって文豪・坪内逍遥が取り上げたことで再発見され、歌舞伎で上演したところ人気に火がついた。これが1909(明治42)年で長い間忘れ去られていたわけだ。それにしても300年前に書かれたとは思えない現代にも通じるストーリーには驚かされる。

 実在の事件に材をとったと伝えられているが真贋は不明。だが近松は今でいう「実録もの」を得意とした。亡くなる3年前だから最晩年の作品となる。正しくは「あぶらのじごく」と読む。

 何といっても与兵衛役の中村扇雀(四代目坂田藤十郎)と父親の徳兵衛役(二代目中村鴈治郎)という実際の親子共演がミソ。扇雀の能面のような顔が役にはまっている。彼は自分が映画向きではないと思い、東宝で50年代に数本の映画に出演しているに過ぎない。その意味でも貴重。

 文楽では油壷を倒してお吉が逃げ回り滑って転ぶ場面など、油で滑る様子は動きで描き出せたが、歌舞伎の舞台や映画では本物の油を使うことができない。そこでふのりを使った。

 新珠三千代が出演したのは1957年版で、当然お吉の役。堀川監督の演出は堅実。言葉を返せば面白みに欠けるが、新珠の瀕死(ひんし)のラストシーンの壮絶さはそれをカバーして余りあるインパクトだと評判になった。

 他の配役をみると母のさわは名優、三好栄子、妹おちかは香川京子、夫の七左衛門が山茶花究だった。他に十代目岩井半四郎や芦谷雁之助、小雁もいい味を出している。香川京子が意外とむっちりしている。脚色は橋本忍。堀川監督によると、ボンボン息子が堕落するさまは当時の太陽族をイメージしたという。

 ちなみに最初の映画化は24年の松竹キネマ、続いて28年に帝国キネマ。36年には日活、49年に大映で、そして本作。

 92年にはフジテレビと京都映画が五社英雄監督で撮ったが、これは設定がアレンジされ趣が異なる。2009年にはジョリー・ロジャー製作で、合計7作も作られたが、やはり中でも名作といわれるのが新珠版だ。 (望月苑巳)

 ■新珠三千代(あらたま・みちよ) 1930年1月15日~2001年3月17日、71歳没。宝塚歌劇団のトップ娘役から、55年に退団後は日活の看板女優として活躍。57年には東宝に移籍。テレビでは『細うで繁盛記』のヒロインが当たり役となる。

zakzak

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