定年後の居場所

支援団体が一堂に会す「フェア」の提案 趣味も楽しむ“合わせ技一本”

 たとえば、週に3日働きながら大学院に通って修士論文に取り組むとか、仕事のオフの時に、自家用車で高齢者や障害者のアッシー君を務めながら喜ばれている例もある。仕事の他に自分の趣味を楽しみ、高齢者大学で学ぶなど同時にいくつかのことに取り組んでいる人は少なくない。定年後は現役の時に比べて選択の余地は広がる。柔道でいう「合わせ技一本」という感じで生活を楽しんでいる人もいる。

 そうであるならば、シニア層に対するサービスを提供している団体が一堂に集まって「定年後フェア」をやってみても面白いのではないか。成人式と同様に、市町村が「還暦式」という形にしてもよいだろう。役所や企業がシニア層が働けるように仕事とのマッチングを図り、大学やカルチャーセンター、地域の高齢者大学などの学びの場を提供する団体がブースで軒を連ね、地域活動やボランティアに取り組む組織、身の丈にあった起業を指導する専門家、スポーツクラブ、旅行会社なども参加する。

 お金については、「貯める、増やす」だけでなく「使う」面に重点を置いたコンサルタントも登場する。終活準備のエンディングノートではなく、新しく何かに取り組むスターティングノートを書くことを勧める講座があっても良い。自らの定年後の過ごし方をアピールするコンクール「T-1(定年後)グランプリ」を実施してはどうだろう。地方予選と全国大会を行って盛り上げる。「青年の主張」があるなら「定年の主張」をやっても良い。この定年後フェアは荒唐無稽な話だろうか。

 ■楠木新(くすのき・あらた) 1979年、京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。50歳から勤務と並行して取材、執筆に取り組む。2015年3月、定年退職。現在、神戸松蔭女子学院大学教授。人事・キャリアコンサルタント。25万部を超えるベストセラーになった『定年後』(中公新書)など著書多数。21年5月に『定年後の居場所』(朝日新書)を出版。

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