【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮の公式イベントに金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記の顔をプリントしたTシャツを着た人物が登場し、注目を集めている。北朝鮮で神聖視される最高指導者の顔を描いたものは厳重な取り扱いが求められるため、極めて異例とみられている。
北朝鮮・平壌で11日に開幕した新兵器の展覧会の式典で国歌が演奏されたが、朝鮮中央テレビが12日に放映した映像では、指揮者が着た白いTシャツに正恩氏の顔が描かれていた。
親しみやすい指導者をアピールするのに加え、国家リーダーを含む有名人の顔をあしらった服がよく着られる欧米のスタイルにならうことで、「普通の国」と印象づける狙いがあるとの見方が韓国で出ている。
北朝鮮で金日成(キム・イルソン)主席や金正日(キム・ジョンイル)前総書記、正恩氏の顔が掲載された新聞や本、教科書は「1号出版物」と呼ばれ、毀損(きそん)が見つかれば、罪にも問われる。過去には、火災の際に少女が正日氏の肖像画を持ち出そうとして亡くなったことが「美談」とたたえられた。
Tシャツは洗濯が必要で、正恩氏の顔が泡にまみれてもみくちゃになりかねない。洗濯時に毀損される恐れもあるため、韓国メディアは、北朝鮮で「正恩Tシャツ」が広がるかは疑問だとの見方も伝えている。