「キシダノミクス」の正体とは? 財務省と近しい関係が懸念材料、積極財政の裏に増税リスクも 識者「経済の失速が心配」

 4日に発足した岸田文雄政権の重要課題の一つが、コロナ禍で落ち込んだ経済の回復だ。経済成長と富の再配分を両立させる「新しい資本主義」を掲げ、金融緩和路線の継承や積極的な財政支出を打ち出す一方、財務省との距離の近さから増税論議の浮上を懸念する声もある。キシダノミクスの正体は-。

 岸田氏が自民党総裁選で勝利した9月29日、日経平均株価は600円超下げ、3万円の大台を割り込んだ。翌日以降も下げ止まらず、首相に就任した10月4日も326円安で2万9000円割れし、4営業日での下げ幅は計1739円にも達した。

 米連邦準備制度理事会(FRB)の量的金融緩和縮小への警戒感などによる米国株の下落や中国不動産大手の中国恒大集団株の売買停止などが直接の要因とされるが、岸田氏の勝利が市場で好材料視されなかったとの見方もでき、新政権にとって逆風の船出となる。

 岸田氏はアベノミクスの3本の矢である大規模な金融緩和、機動的な財政政策、成長戦略を継続する方針だ。

 財政政策では基礎的財政収支(プライマリーバランス)を25年度に黒字化する政府の財政健全化目標の先送りを容認し、数十兆円規模の経済対策の必要性を強調。コロナ禍で生活が苦しくなった人への給付金や、日本を科学技術立国にするための「10兆円規模の大学ファンド設立」などを打ち出している。

 第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストは「アベノミクスを継続し、10年間消費増税をしないと主張するなど、もともとの緊縮派の色が和らいでおり、数十兆円の経済対策にも期待できる」と評価する。

 一方で岸田氏は格差是正に向け、戦後日本の「経済重視路線」を主導してきた宏池会(現・岸田派)を旗揚げした池田勇人元首相の政策にならった「令和版所得倍増計画」と「成長と分配の好循環」を掲げている。そのうえで財政健全化の旗を堅持するともしている。

 前出の永濱氏は懸念材料として「財政規律を維持するために金融所得課税などを拙速に実施するリスクもあり、経済を失速させはしないか心配だ。再分配で恩恵を受ける人もいる半面、割を食う人もいるので、バランスよく取り組めるのかが課題になる」と指摘する。

 「アベノミクス継承や増税の棚上げは非常に良いが、もう一段、財政に積極的になる必要がある」と強調する上武大の田中秀臣教授(日本経済論、経済思想史)は、より大胆な政策の提示を求めている。

 「総裁選で高市早苗政調会長が掲げたような防災や安全保障、今後の感染症対策など、長期のリスク管理に必要な投資が必要になる。まず成長ありきでコロナ禍の痛みを脱却し、その延長線で個人・企業への手厚い給付金など分配政策を実施すべきだ」と注文をつける。

 市場ではこれまでのところ、キシダノミクスを消化し切れていない感もあるが、田中氏は「財政・金融政策を手堅く実施するというメッセージが必要だ。真水で30兆~40兆円の補正予算を年内に編成するというシグナルを国内外に出せば、市場も好感していくだろう」とみた。

 宏池会から30年ぶりの首相となる岸田氏だが、過去の閣僚就任時でも官僚と酒を酌み交わす人柄も取り沙汰されるなど霞が関との関係も良好だ。

 父の岸田文武元衆院議員は通産官僚出身だが、親戚関係に旧大蔵・財務官僚出身者は多い。いとこの宮沢洋一元経済産業相、親戚の宮沢喜一元首相もともに大蔵官僚出身だ。

 政治評論家の伊藤達美氏は「各派閥の意見を尊重して『チーム岸田』で臨む慎重さは期待できる。ただ、総裁選で大胆な財政政策を掲げた高市氏を財務相ではなく、政調会長に起用した人事は何かに遠慮しているのかと思いたくなる」と話す。

 「人の話をよく聞く」と評判の岸田氏だが、今後の経済政策では誰の言葉に耳を傾けるのだろうか。

zakzak

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