小林至教授のスポーツ経営学講義

今季も100敗超…オリオールズの“タンキング”問題 とてもMLBとは思えないみっともないチームの典型

オリオールズは9月30日の本拠地最終戦を勝利も、110敗を喫した(AP)
オリオールズは9月30日の本拠地最終戦を勝利も、110敗を喫した(AP)

 従来の「成長」なくして「分配」なしから、「分配」なくして「成長」なしへと経済政策を転換する-。岸田新首相はそのように方針を示した。

 すべて市場に委ねれば、切磋琢磨の競争が国富を増し、結果的に最適な配分がもたらされる、というわけにはいかないのは、米国社会の極端な貧富の差を見れば分かるし、分配すればいいってものではないのは、共産主義が崩壊したことからも自明だ。つまり、競争促進と再分配という二律背反に目配りしながらの舵取りこそが、政府の役割ということだ。

 プロスポーツリーグにおいても、競争促進と再分配のバランスは、たびたびイッシューになる。

 たとえばMLBでは「タンキング」の問題をどう解決するかが喫緊の課題である。タンキングとは、低迷する球団が主力選手を大量に放出して、そのシーズンの優勝争いをあきらめる代わりに、そのトレードで獲得した若手有望株の成長と、下位球団が優先されるドラフトをもって、近い将来に大躍進を遂げようとする行為である。

 このタンキング、プロスポーツリーグ、とりわけMLBでは昔からよくあった。問題は、近年はどんどん先鋭化しており、とてもメジャーリーグとは思えないような、みっともないチームで戦うケースが頻出していることだ。

 ボルティモア・オリオールズはその典型で、2018年に115敗して以来、短縮シーズンとなった昨年を除き、シーズン100敗以上を続けている。今年は5月に14連敗、8月に19連敗もした。年俸総額も60億円弱と、トップのロサンゼルス・ドジャース(294億円)の1/5ほど。年俸が安くても、毎年のように優勝争いをするタンパベイ・レイズ(77億円)のようなチームもあり、カネを使えばいいってものではないが、カネも使わず負けてばかりのチームの存在は、プロリーグの根幹である公正な試合の確保を損なうものだ。実際、ファン、選手会などあらゆる方面から機構に対して早急の施策が求められている。

 MLBは、NFLやNBAなど米プロスポーツはみなそうだが、欧州や日本のプロサッカーリーグのような降格制度がないため、チームを取り換えることはできない。そのため、米プロスポーツは収益の分配(レベニューシェア)、年俸の枠(サラリーキャップ)、ドラフト制度などをもって戦力をある程度、均衡させて商品(試合)の品質保証を試みているが、その方法はさまざまで絶対的な正解はない。

 MLBのタンキングでいえば、収益の分配の仕方がつたないという声もある。現在MLBでは、詳細は省くが全球団の売上の総和の1/3ほどを機構で管理し、各球団に再分配している。オリオールズにも130億円ほどが給付されているが、年俸総額の下限は設定していないから、もらった金をどう使うかは各球団の裁量となる。「なんだ、下限を設定すればいいだけではないか」と思うだろうが、下限を設定するならば上限の設定も必要だという議論になり、そうなると労使協定マターとなる。

 組合の組織率は先進諸国では戦後、一貫して低下してきており、米国ではほぼ無力化しているが、プロスポーツでは健在。とりわけMLBの選手会は、世界最強の労組といわれるツワモノだ。来シーズン末には労使協定が失効し、タンキングも含めて争点が多く、荒れることが予想されている。かくして議論は踊り、物事はなかなかに進まない。いちプロスポーツリーグでもそうなのだから、いわんや国をや。 (桜美林大教授)

zakzak

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