駐大阪韓国総領事インタビュー「拉致問題、非核化の過程で協議可能」

産経ニュース
インタビューに答える趙成烈(チョウ・ソンリョル)駐大阪韓国総領事=令和3年10月、大阪市中央区(南雲都撮影)
インタビューに答える趙成烈(チョウ・ソンリョル)駐大阪韓国総領事=令和3年10月、大阪市中央区(南雲都撮影)

韓国の安全保障問題の専門家で、今年6月、駐大阪韓国総領事に着任した趙成烈(チョウ・ソンリョル)氏が、大阪市内の同総領事館で産経新聞の単独インタビューに応じた。今年9月に北朝鮮が相次ぎ新型ミサイルを発射したことについて、趙氏は「体制維持のための武器の現代化が主な目的」と分析し、核ミサイル問題で日米韓が協調し対応することが重要とした。また、日本人拉致問題について、米朝対話が再開しない状況で日朝の直接交渉は難しいとの見方を示し、「非核化交渉の過程で拉致問題を並行して協議できる」と述べた。

趙氏は最近の北朝鮮の一連の新型ミサイル発射について、「目的は老朽化した武器の現代化にある。国際社会から『挑発』とされることに反発しているのは、周辺国に脅威を与えることよりも、体制を守る軍事力を維持する意味が大きいため」と分析した。

一方、核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射は当面ないとみる。その理由として、北朝鮮には「米国と約束した『レッドライン』を守ることで、非核化交渉の余地を残したい意図がある。米国に対する抑止力を向上し、交渉を引き出すため、たやすく核ミサイルを放棄せず、交渉カードとして国際社会の経済制裁を解きたい考えだろう」と指摘した。

■「韓国政府はメッセンジャー」

日本人拉致問題をめぐっては、2018年4月に板門店(パンムンジョム)で行った南北首脳会談での文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記とのやりとりを明らかにした。趙氏によると、文大統領は「韓半島の平和のためには、米国、日本との国交も正常化しないといけない。日本との関係で核心的問題は拉致問題の解決だ」と語りかけた。これに対し「金総書記は『わかった』と話した。これは具体的に何かをするということではなく、文大統領の説明について理解したということと受け止めている」と述べた。

その後も「韓国政府は文大統領や特使を通じて日本政府の立場を北朝鮮に伝えるメッセンジャーの役割を果たした」と説明。しかし非核化交渉の停滞により拉致問題も進展がなかったと結論付けた。

日朝会談の実現については、北朝鮮は「拉致問題で日本と米国はほぼ同じ立場ととらえているとみられ、日本と直接交渉をしようとはしないだろう」と推測する。このため、日米韓3カ国が協力し北朝鮮を対話の場に引き出し、「長期間にわたる非核化の中間過程で人道的支援や経済協力、終戦宣言、拉致問題などを並行して協議していくのがよい」と述べた。

■歴史問題「改善に長い時間」

日韓関係はいわゆる徴用工問題や慰安婦問題をめぐって国交正常化以来「最悪」とされる状態に陥っている。これらの問題について、趙氏は「歴史問題の根本的解決には長期的時間を要する。むしろ互いに不一致を認め、協力できる分野を増やしていくことで、相対的に問題を縮小することができる」との考えを示した。また、日本の岸田文雄政権発足と来年、韓国の大統領選で新政権に移行することに言及し、「政治的過渡期にあり、政治家は国民感情に敏感になる。韓国で慰安婦や徴用工問題に触れることや、日本で靖国神社参拝のような事態の悪化につながる発言や行動をしない配慮が必要ではないか」と牽制(けんせい)した。

大阪総領事館としては今月12日、大阪市内で朝鮮半島の安全保障や非核化をテーマにしたセミナーを開くほか、経済交流や若者の文化交流を通じて長期的な関係改善を目指すという。(石川有紀)

【プロフィル】趙成烈(チョウ・ソンリョル) 1958年生まれ。韓国の情報機関傘下の国家安保戦略研究院で約22年勤務し、対北朝鮮政策や北朝鮮の核問題、韓米同盟について研究。文在寅政権発足後、2017年7月に国家安保室政策諮問委員長、18年1月から統一部政策諮問委員長などを歴任し、21年6月から現職。東京大、慶応大の客員研究員として来日経験がある。

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