歌姫伝説 中森明菜の軌跡と奇跡

洋楽ディレクターと感性合致…わずか4カ月で制作現場が激変!

あどけない顔ながら芯の強い女性だ
あどけない顔ながら芯の強い女性だ

 デビュー3年目を迎えた中森明菜だが、制作現場における不協和音は頂点に達していた-。

 デビュー当時から明菜のディレクターだった島田雄三は頭を悩ませていた。その光景を目の当たりにしていたのが、ワーナー・パイオニア(現ワーナーミュージック・ジャパン)邦楽宣伝課で明菜の宣伝を担当していた田中良明(現在は「沢里裕二」として作家活動)だった。

 「島田さんのシングルの配球は、それなりに新機軸だったと思いますが、明菜自身はもっと違うアーティスティックな作品、衣装を求め始めていた。島田さん自身はウリのツボを押さえた作品を出したいと考えていたのでしょうけど…、ことごとく意見が合わなくなっていました。そのため島田さんは明菜と距離を置くことを決意し、それまで洋楽部だった藤倉克己さんが邦楽部に異動して明菜を担当することに同意したのだと思います。島田さんも課長になっていたので、おそらく藤倉さんだったら裏で自分が仕切れると考えたのかもしれません」

 そんな島田の思惑について、当時を知る制作部員も「結局、藤倉さんでは仕切れるはずがないから、最終的に明菜から『やっぱり島田さんじゃなければ』って言わせたかったようです」と振り返る。当時を知る音楽関係者はいう。

 「デビュー直後に新しいレコード会社を設立して引き抜き工作が繰り広げられたこともあったようですが、言い換えるとそれだけ明菜の周辺は利益と思惑で動く人が多かったということです。つまり明菜にはそれだけ人を動かすパワーというか魅力があったわけです」

 島田に代わって、明菜の担当ディレクターになった藤倉克己(現音楽プロデューサー)はいう。

 「自分は洋楽のほうが向いていると思いましたが、洋楽は自分で作れないですから。そんな意味で邦楽のほうが自分の力を発揮できるんじゃないかとの思いもありました。結局は上に立つ人間が誰かということに尽きます。明菜の制作を任されたとき、当然、明菜ともいろいろと話しましたよ。で、まず思ったのは、俺のために誰が事務所対策をしてくれるか、社内も含め、明菜の制作について好き勝手にやらせてくれるかが重要だと思いました。今だから正直にいうと、島田さんにはちょっと嫌がらせを受けたことがありました」

 そんな藤倉を支えたのが寺林晁(現エイベックス・エンタテインメント・レーベル事業本部アドバイザー)だった。結局、洋楽畑出身で邦楽に疎い藤倉は明菜とソリが合わないと思っていた島田の思惑は完全に外れた。田中は振り返る。

 「明菜は、もはや既成のアイドルの制作感覚ではない、ある意味で得体の知れないエネルギーを持っていたのかもしれません。要するに、過去に成功体験のある島田さんでも、明菜はその範疇(はんちゅう)を超えていたということです。逆に国内アイドル市場が未経験だった藤倉さんのほうが、明菜の感性にはピッタリとハマった。というか、藤倉さん自体がすでに社内ディレクターの範疇を超えたアーティストのような存在でしたからね。さすがに明菜の口から『やっぱり島田さんのほうが…』なんて言葉が出ることはなかったですね」

 ちなみに藤倉は『飾りじゃないのよ涙は』から制作現場に加わったが、ディレクターとして正式に担当したのは『ミ・アモーレ』からだ。

 「当時社内的にも松岡直也の人気が高かった。ジャズ・ミュージシャンとしても実績があり、とにかく売れてほしいと思っていた。寺林さんからの提案もあって松岡に曲を依頼したのです」

 藤倉の洋楽マインドは見事に明菜と合致した。

 「今でも覚えていますが『ミ・アモーレ』で状況は急転しました。1984年11月14日に発売された『飾りじゃないのよ涙は』と85年3月8日に発売された『ミ・アモーレ』では、発売期間が4カ月しか離れていませんが、このわずか4カ月間で明菜の制作現場が激変してしまったのです」(田中) =敬称略 (芸能ジャーナリスト・渡邉裕二)

 ■中森明菜(なかもり・あきな) 1965年7月13日生まれ、東京都出身。81年、日本テレビ系のオーディション番組『スター誕生!』で合格し、82年5月1日、シングル『スローモーション』でデビュー。『少女A』『禁区』『北ウイング』『飾りじゃないのよ涙は』『DESIRE-情熱-』などヒット曲多数。NHK紅白歌合戦には8回出場。85、86年には2年連続で日本レコード大賞を受賞している。

zakzak

  1. 「いちゃもん、うっとうしい」吉村知事が枝野氏を痛烈批判

  2. 【衆院選2021年秋】与野党“落選危機リスト”大物・著名候補28人 東京18区・菅直人氏が大接戦 大阪は三つどもえ 岩手3区・小沢一郎氏は高齢も意気軒昂

  3. 1年間に売れた韓国車は1台!?日本車シェアほぼ100% 知られざる親日国パキスタンの素顔

  4. 小泉進次郎氏「妻に申し訳ない」 クリステルさん名義の巨額資産公開で

  5. 「枝野さん、議論しろよ」 安倍前首相が憲法シンポで改憲議論呼びかけ