生きもの好〝紀〟心

キテンハタ報告の顛末②「生きた姿」残すため

産経ニュース
キテンハタ(仮)の生体写真を撮影する脇本総志さん=国島大河学芸員提供
キテンハタ(仮)の生体写真を撮影する脇本総志さん=国島大河学芸員提供

本州初記録のキテンハタを和歌山県内の中学生・脇本総志さん(14)が論文として報告した話の続きです。これがキテンハタならば、標本に基づく本州からの初記録なのでぜひ論文にしようと提案しました。実は以前、脇本さんが寄贈してくださったヒメツバメウオの標本を基に、当館の揖善継学芸員が論文を執筆したことがあり、次に珍しいものを寄贈してくださったときには、本人に論文を執筆してもらおうと考えていたのでした。

さて、ここでそもそも論文とは何かについて簡単に紹介します。「論文」というのは学術雑誌に掲載されている記事のこと。文系、理系を問わず多彩な分野のものがあり、大きな学会が発行するものから地方の同好会、あるいは有志で作られているものまで多種多様です。

自然史系博物館では、標本を収集・保管することが最も重要な業務のひとつ。さまざまな地域、分類群の標本が蓄積されることから、そうした標本に基づいて種の分布に関する情報を報告することが必然的に多くなります。今回も例に漏れず、和歌山県・串本産のキテンハタ標本に基づいて、本州での生息を報告したということです。

話は戻り、キテンハタを持ち込んでもらった日は、まず水槽写真の撮影を進めてもらいました。魚釣りをしたことのある方であればご存じかと思いますが、魚の体は、生きているときは美しく鮮やかな色彩でも、死んでしまうとすぐに色あせてしまいます。

論文では「本来の生きた姿をできる限り読者に伝える」必要があるため、素材が生きた状態で手に入った場合、その色彩も写真や文章として残します。魚の色彩は、おびえたときにくすむなど状況によって変化することがあるため、時間をかけて満足いく写真を撮影してもらいました(写真)。その後、いよいよ標本作製に取りかかります。

まずは生きている魚を麻酔で眠らせ、きれいな状態で安楽死させます。その後の魚類標本のおおまかな作製手順は以下のとおりです。①虫ピンで鰭(ひれ)を広げてホルムアルデヒド溶液(ホルマリン)で固定する。ここでの「固定」とは薬品で体を腐らなくさせること②鰭が開いた状態で固定されたら生鮮状態での標本写真を撮る。

魚類の標本は液浸標本といって薬品につけて保存しますが、時間とともに色あせてしまうため、その前に標本にした際の色の情報も写真として記録しておく必要があります。こうして初日は標本作製と撮影まで終え、次回の日程を決めた後、脇本さんには一度帰路についてもらいました。(つづく)=和歌山県立自然博物館学芸員 国島大河

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