昭和歌謡の職人たち 伝説のヒットメーカー列伝

酒井政利さん(3) 歌の発想は映画監督、タイトル名人

酒井さんの仕掛けがヒットしたジュディ・オングの『魅せられて』
酒井さんの仕掛けがヒットしたジュディ・オングの『魅せられて』

 1982年に梓みちよのアルバム『夜会服で…』で酒井政利さんと仕事をすることになった。サウンドプロデュースは加藤和彦さん。大まかな全体像はもう加藤さん、作詞の安井かずみさんと話ができていたのだろう。酒井さんがオケ録りに来ることはなかった。

 この仕事で酒井さんとアレンジやサウンドについて話をすることはなかった。音楽に精通したディレクターが多いが、なまじ知識があると邪魔をすることもよくある。大衆目線で客観的な感性の持ち主のほうがいい。岸田智史(現・岸田敏志)の『きみの朝』のデモを聴いて、声をかけたのは酒井さんである。

 79年の映画『エーゲ海に捧ぐ』の宣伝用音楽として酒井さんが用意していたものが、化粧品のCMソングになったジュディ・オングの『魅せられて』だった。独特な衣装も話題を集めてミリオンセラー。レコード大賞も受賞した。

 映画好きの酒井さんはタイトル名人でもあった。『秋桜』『異邦人』『2億4千万の瞳』など挙げたらきりがない。

 キャンディーズ担当の渡辺音楽出版、松崎澄夫プロデューサーは「キャンディーズの解散の頃、ソニー社内の混乱を収めていただき、そして、キャンディーズの最後のアルバムタイトル『早春譜』を即座に提示された。言葉の使い分けは硬軟巧みでした。われわれの視点と違い、秀逸なアイデアがポンポンと出る。常に世の中を見続けているすごい人です」と話していた。

 ラジオ、テレビの音楽番組からCM、有線放送、カラオケまで多岐にわたるメディアに対して機を見るに敏の酒井さんはまさに歌作りの監督だった。

 退職後も小さな劇場の芝居やコンサート会場などにも精力的に足を運んでいた。業界の新年会でお会いした際、カウンセラーの勉強をされていると聞いた。僕も臨床心理士の授業を聴いていたので、「カウンセラーの一番大事なことは相手の話を聞くことですね」と話すと、思いきり笑ってもらった。

 2015年に酒井さん行きつけの六本木の店で食事をしたとき、「あなたはちゃんと伝道師をやりなさい」と言われた。本当にいろいろとお世話になりました。ありがとうございました。

 ■酒井政利(さかい・まさとし) 南沙織、郷ひろみ、山口百恵、キャンディーズら300人余をプロデュースし、売上累計は約8700億円。『愛と死をみつめて』『魅せられて』で2度の日本レコード大賞を受賞した。2020年度文化功労者を受章。21年7月16日、85歳で死去。

 ■篠木雅博(しのき・まさひろ) 株式会社「パイプライン」顧問、日本ゴスペル音楽協会顧問。1950年生まれ。東芝EMI(現ユニバーサルミュージック)で制作ディレクターとして布施明、アン・ルイス、大塚博堂、五木ひろしらを手がけ、椎名林檎や石嶺聡子のデビューを仕掛けた。2010年に徳間ジャパンコミュニケーションズ代表取締役社長に就任し、リュ・シウォン、Perfumeらを輩出してきた。17年に退職し現職。

 

zakzak


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