肉道場入門!

定番から素材と調理をアップデートした、三位一体の「棒々鶏」 中華料理店「汀」

鶏、きゅうり、たれが三位一体
鶏、きゅうり、たれが三位一体

★絶品必食編

 定番はうれしい。そこにあるだけで安心する。一方で定番は、郷愁感頼みという皿も少なくない。それなりにおいしいけれど、それだけを食べに行くほどには惹かれない。

 だからこそ郷愁感を大切にしつつ、新しいおいしさを盛り込んだ料理がメニューにある店を見つけると、舞い上がってしまう。

 江戸川橋と神楽坂と早稲田というトライアングルの真ん中に今年「汀(みぎわ)」(東京都新宿区)という小体な中華料理店がオープンした。

 オーナーシェフは「神楽坂芝蘭(チーラン)」で料理長も務めた江崎祐弥さん。

 伝統的な四川料理店のDNAを受け継ぎながら、味について現代版にアップデートすべき手法は上書きしていく。

 「汀」の棒々鶏はまさにそんな一皿だ。棒々鶏と言えば、蒸し(茹で)鶏にきゅうりの細切りが添えられ、胡麻ベースのタレがかかっている。おいしさに間違いのない一品でありながら、中華料理なのに日本人でさえも郷愁を感じる逸品でもある。

 しかし「汀」は、郷愁だけを頼りにはしない。棒々鶏というなじみ深い料理の郷愁感を残しながら、素材と調理にアップグレードを施した。

 鳥取の銘鶏である大山どりの胸肉を63度で1時間、じわりじわりと加熱し、内部にたっぷりの水分をたたえた仕上がりとなっている。

 その瑞々(みずみず)しい塊を拍子木に切り出し、山のように盛る。ほのかに上気したようにつややかで見るからに美しく食欲をかきたてる。

 口に運んで噛みしめれば、濃厚ながらもピリリと引き締まったゴマだれの奥から、清涼たるきゅうりの千切りと、低温で熱を通されたやわらかくコク深く、透明感のある鶏の味わいが押し寄せてくる。

 鶏、きゅうり、たれという三者はいずれのペアでも楽しく、三位一体となれば、クラシカルな棒々鶏の郷愁はありつつも、口内に吸い付くような新しい食感がどうにも心地いい。

 誰もが知る味だからこそ、上書きには勇気が必要だ。だが必要なアップデートがなされたとき、その皿は、長く愛される、新定番となるはずだ。

 ■松浦達也(まつうら・たつや) 編集者/ライター。レシピから外食まで肉事情に詳しく、専門誌での執筆やテレビなどで活躍。「東京最高のレストラン」(ぴあ刊)審査員。

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