日米往復した頭脳、ノーベル物理学賞に真鍋淑郎氏 地球温暖化予測の先駆的な研究が高く評価 気象分野での受賞は異例

ノーベル物理学賞の受賞が決まり、記者会見する真鍋淑郎さん(ロイター)
ノーベル物理学賞の受賞が決まり、記者会見する真鍋淑郎さん(ロイター)

 今年のノーベル物理学賞の受賞が決まった真鍋淑郎・米プリンストン大上席研究員(90)ら3人は、地球温暖化の予測に関する先駆的な研究が高く評価された。気象分野での受賞は異例で、「ノーベル賞の新時代」と指摘する声もある。日米を行き来した頭脳が地球環境の研究に大きく貢献した。

 日本のノーベル賞受賞は外国籍を含め計28人。物理学賞は12人となった。

 大学で5日、記者会見した真鍋氏は「これから気候がどうなるか気になる」と語り、飽くなき探究心をのぞかせた。

 ノーベル賞決定の知らせを「驚いた」と振り返り、「研究を始めた1960年代には、気候変動がこれほどの大問題になるとは想像していなかった。研究を駆動したのは好奇心。最も面白い研究は好奇心によって行われたものだ」と強調した。

 真鍋氏は69年に大気の流れと海洋の循環を組み合わせ、長期的な気候の変化をコンピューター上でシミュレーションする「大気・海洋結合モデル」を世界で初めて発表した。

 89年の論文ではこのモデルを使い、今後70年間の気候の変化を予測。温室効果ガスの排出量が年間1%ずつ増加した場合、特に北半球の高緯度地域で温暖化が進むと結論付けた。この予測は、後の観測でおおむね正しいことが裏付けられた。

 科学ジャーナリストの馬場錬成氏は「物理学賞は、理論や予測が実証されたうえで理論物理学者と実験物理学者双方が受賞するケースが定番だ。地球全体がからむ気象は実験が難しく、地球温暖化という現実が実証したといえる」と解説する。

 愛媛県新宮村(現四国中央市)出身の真鍋氏は東大大学院博士課程修了後の58年に論文が認められて米国に招かれ、米海洋大気局で勤務。68年からプリンストン大客員教授を兼任した。

 米国籍を取得し、長く米国で研究した理由について「日本人は他人に迷惑を掛けないことを重んじるが、米国では何でも好きなことができる。研究にはコンピューターも好きなだけ使った。私は他人に合わせて生きる方ではない」と語る。

 日本からの「頭脳流出」により米国で研究が花開いた真鍋氏だが、97年に帰国し科学技術庁(当時)の地球フロンティア研究システム地球温暖化予測研究領域長を務めた際には、米国で「日本への頭脳流出」だと話題になった。

 その後再び米国に戻り、90歳のいまも現役の研究員だ。前出の馬場氏は「90歳で大学の上席研究員として遇されているのは、肩書ばかり与えられる日本の学術環境とは異なり、見習うべき点もある」と指摘する。

 真鍋氏は会見で、妻の信子さん(80)に「中華や和食、イタリアンなど毎日彼女の料理を楽しめて果報者だ」と感謝の意を述べた。「子育てもよくやってくれたし、運転中に考え事をしてしまう私に代わって彼女が上手に運転してくれる。おかげで研究に100%集中できた」と会場の笑いを誘った。

 ■気象予報士・森田正光氏も歓喜 「気象学に光が当たる出来事」

 気象分野でノーベル物理学受賞という前人未到の快挙をなしとげた真鍋淑郎氏。気象予報士の森田正光氏(71)は夕刊フジの取材に、驚きと喜びを語った。

 「これはすごいことだ。気象学は物理学賞の対象になったことはなかった。気象学はノーベル賞には関係ない学問だとわれわれも思っていたが、考えても見なかったことが起きたという気がした」と率直な感想を話す。

 「真鍋先生の研究がなければ、いまのように地球温暖化に対する危機感も持たれず、対策が遅れていたかもしれない。二酸化炭素によって温暖化になるという研究はあったが、実際に人間の活動の影響について基礎研究を実施し、シミュレーションによって仕組みや事実を明らかにしていったのだろう」と解説する。

 森田氏は気象予報士として長年活躍してきたが、「海外の論文を読むと、いつも『Syukuro Manabe』の引用が出てくる。40年前から名前は身体にしみついている。気象学に光が当たる出来事だ」と語った。

zakzak

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