西日本鉄道がコロナ禍で落ち込んだ観光需要の回復に力を入れている。5日には福岡空港を巡るユニークな新ツアーを企画し、報道関係者向けの試乗会を開いた。福岡県の天神大牟田線で運行する観光列車には従来にない課題解決型のテーマに挑んでいる。緊急事態宣言も解除され観光シーズンが本格化する中、魅力ある企画に知恵を絞り、反転攻勢を試みる。
空港を巡る新ツアーは、西鉄と福岡空港を運営する「福岡国際空港」が企画した。バスに乗車して立ち入り制限エリアを巡り、離着陸する航空機を間近で見ることができる。屋根のないバスが使用され、高さ約3メートルの座席から、普段見ることができない景色をテーマパークのような感覚で楽しめる。
運行コースは3種類あり、福岡市役所や国内線団体バス乗り場などを発着点とする。まずは11月6、7両日に開催し、利用状況などを踏まえて定期運行を検討する。
西鉄などによると、走行するのは保安上、関係者しか立ち入れない区域だが、観光需要を取り戻そうと空港関係者と協議を進め、実現した。飛行機の利用者以外にも空港の活用を広げる狙いもあり、福岡国際空港プロジェクト推進課の松浦義郎課長は「航空業界や観光業界は非常に厳しい状況が続いている。ツアーをきっかけに、買い物や食事の利用で空港を身近に感じてほしい」と語った。
新型コロナの感染拡大の影響で、空港の利用者数は大幅に減り、空港運営はかつてないほど厳しい環境にある。福岡国際空港は西鉄や九州電力などが出資し、東アジアトップクラスの空港を目指して新規路線の開拓などを進めてきたが、コロナ禍が直撃して収益が悪化。令和3年3月期連結決算では、負債の合計が資産の合計を上回る債務超過に陥った。
現在は国内線で28路線、国際線で19路線を持つが、国際線はコロナ禍に伴う運休で4路線しか運行されていない。
ただ、コロナのワクチン接種が進むことで、航空会社が増便を検討するなど、明るい兆しも出始めているという。今後は、国際線ターミナルビルの増改築や、国内線での複合商業施設の整備が計画されている。航空機の乗客以外にも空港利用を広げることはコロナ禍以前からの課題で、逆風をばねに新たな魅力を創出し、コロナ収束後の環境を整える。
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西鉄が福岡県の天神大牟田線で運行している観光列車「ザ レールキッチン チクゴ」では、秋メニューのテーマを「ジビエ」に設定した。福岡県の八女市や豊前市で捕獲されたイノシシやシカを使った料理を提供している。鳥獣被害が深刻な県内の状況を踏まえ、ジビエの有効利用で地域振興につなげる「課題解決型」の役割を観光列車に持たせた。
ジビエ料理は、夕方に運行するディナーコースで提供し、猪肉や鹿肉を使った前菜やスープ、ハンバーグなどをコース料理で味わえる。福岡(天神)駅発で、途中で折り返して同駅に戻るルートで、9月に提供を始めた。
県によると、野生鳥獣による県内の農林水産物の被害額は、令和2年度で7億4千万円で、農家に深刻な被害をもたらしている。その一方で、捕獲された鳥獣のうちジビエ利用は1割程度にすぎず、有効活用できていないという。
県の担当者は、鳥獣を資源として活用することで地域振興が期待できるとして「やっかいものの鳥獣をマイナスからプラスの存在に変える取り組みが重要」と説明する。西鉄は従来、観光列車の食を通じ、地域の魅力を発掘していたが、新たに課題解決に寄与することで付加価値を高める。
料理は、秋月温泉料亭旅館清流庵(朝倉市)の総料理長、小野貴史氏(51)が監修し、硬さや臭みが気になるジビエを、低温調理や相性のよい食材との組み合わせで、多くの人が親しめるように仕上げた。
八女市で野生鳥獣の捕獲や肉の販売を手掛ける井手口良文氏(67)は「おいしく食べてもらうことが販路拡大につながる。八女の猟友会のメンバーも高齢で、数年で半分ほどに減りそうだ。取り組みは若者に目を向けてもらうきっかけにもなる」と期待する。
(一居真由子)