勝負師たちの系譜

AI導入が新手研究を後押し、強まる急戦志向 数百億手先を読むソフトで鍛錬

 少しでも将棋を指すファンなら、最近のタイトル戦をはじめとするトップ棋士同士の対局が、序盤早々激しい戦いとなることが多いのに気がつかれると思う。

 最近の対局でも王座戦五番勝負第1局の永瀬拓矢王座-木村一基九段戦は、角交換腰掛銀から午前中に79手進み、完全に終盤戦の局面で昼食休憩を迎えた。

 またB級1組順位戦の藤井聡太二冠-木村九段戦では、相掛かり戦から木村が、昼食休憩再開直後、飛車を切って攻め、一気に終盤戦に突入している。

 このところ特に多くなった戦型が、相掛かり戦である。相掛かり戦は居飛車の中で、最も早くから戦いになる戦型で、次が角交換の腰掛銀や早繰り銀、そして矢倉戦の順かと思う。

 そして激しい将棋ほど一手の価値が高く、研究と深く読むことに長けている若手に有利な戦型と言える。

 私も新手と言われる手を多く輩出したつもりで、新手賞の『升田幸三賞』も2回受賞したのだが、新しい手を実戦で指すのはいつも怖かった。だから研究会で指してから、実戦で使ったものである。

 現在では、この研究会で試すという部分を、AIで確かめるという方法に代わっているはずだ。

 新手を考え付いても、こんな手が成立する訳はないよな、と思って止めることがある。しかしAIが成立する、もしくは互角の勝負という後押しをしてくれれば、自信を持って指せるというのが、序盤から新しい急戦が多く出る理由であろう。

 今日では、ソフトのレベルが高くなると同時に、ハードも格段に向上した。

 AIに弱い私は、今までメモリ4ギガのパソコンを普通に使っていたが、何年か前に最強と言われたソフトを買ったら「8ギガ以上のパソコンで作動して下さい」と書いてあるのを見て、慌てて16ギガにしたが、読みは最高で2400万手くらいだった。

 ある時、タイトル戦で記者の使うソフトを見たら、数百億手先まで読んでいて、メモリは32ギガだと言われ、愕然としたことがあった。

 最近のトップ棋士は、これとは比べ物にならないくらい高度なハードを買っていると聞き、元々強い棋士がAIで研究するから、ここまで強くなるのかと感心した次第。

 将棋の研究はどこまで進むのか、これだけ研究されてもまだ、新手は現れるのかが興味深い。

 ■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。

zakzak

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