がん電話相談から

膵臓がん治療、狭まる選択肢

産経ニュース

Q 50代女性です。昨年8月、背中の痛みがあり精密検査を受けたところ膵(すい)頭部に直径約2センチのがんが見つかり、肝臓にも転移していることが分かりました。胆汁の通り道を確保するためステント(網状の筒)の挿入手術とともに、化学療法を受けましたが、効果がないということでした。今後の治療方針について助言をお願いします。

A 膵臓がん(膵がん)は治療が難しい病気の一つです。外科手術に関して言えば、がんが膵臓内にとどまっていれば昔は手術単独で取り除いていましたが、進行膵がんの場合、残念ながら再発率は約90%と極めて高い状況でした。これは、手術でがんを取り切れたとしても目に見えないがん(微小転移がん)がどうしても残ってしまうためです。膵臓以外に転移していた場合の再発率はさらに高まります。また、膵臓や肝臓のがんは侵襲が高いので手術による体へのダメージも大きく、メリットよりデメリットの方が大きくなってしまいます。微小転移を含めたがんを制御するため、現在は切除可能な膵がんを含め、まずは化学療法で対処することが標準になっています。現在までに受けた化学療法はどのようなものですか。

Q 昨年9月以降、「フォルフィリノックス療法」を受けたものの、腫瘍が増大し新たな肝転移も見つかったため、12月からはゲムシタビンとアブラキサン(一般名・ナブパクリタキセル)の併用療法に切り替えました。一時体調は改善したものの、今年7月の検査で腫瘍増大と新たな肝転移がわかり、効果がなくなったと説明を受けました。

A 4つの点滴薬を併用するフォルフィリノックス療法、ゲムシタビンとアブラキサンの併用療法とも非常に良い治療方法であり、これまで最善の治療を受けていたといえますが、腫瘍が大きくなれば次の治療に移るという判断になります。フォルフィリノックス療法後のゲムシタビン・アブラキサン併用療法は分析疫学の手法である「前向きコホート」で奏功期間が約5カ月といわれており、今回は通常より長く効果を発揮したのだと思います。ただ、この2つの療法の次の療法となると標準治療では選択肢がないのが実情です。仮に治験(新薬開発のための臨床試験)への参加が適格となるのなら選択肢の一つになるでしょう。

Q 分子標的薬投与の可能性を探るため遺伝子パネル検査も受けました。でも、効果のある薬はないとのことでした。

A 膵がんで分子標的治療の対象となる「標的遺伝子」が見つかるのは10~20%以下といわれています。膵がんは「KRAS」と呼ばれる遺伝子の変異が発がん因子の一つで、膵がんでは90%にKRAS変異を認めます。KRAS変異を標的とした治療開発に難渋しているのが現状ですので、膵がんでは分子標的治療の適応となる頻度が少ないのが現状です。

Q 今後は緩和医療を中心にすべきでしょうか。

A 緩和医療というと、ホスピスや緩和ケア病棟という言葉を想像するかもしれませんが、膵がんの場合は痛み止めを服用するなどすでに緩和医療を並行して受けています。一生懸命に治療に向き合うあまり、日常生活で感じる痛みや不眠、気持ちの不調、倦怠(けんたい)感、食欲不振などの相談が後回しになりがちですが、緩和医療は非常に大事です。日々の生活の質を上げる新しい薬も開発されており、こうした問題についても主治医や病院スタッフに積極的に相談すればよりよい日常を過ごせるでしょう。


回答はがん研有明病院・消化器センター肝・胆・膵内科副医長、春日章良医師が担当しました。

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