意外と知らないディズニーとチャップリン

2人の友情を壊した第二次世界大戦 チャップリンは国外追放 ディズニーの有能な技術者は流出

 チャップリンから映画作り、キャラクター、映画ビジネスを学んだウォルト・ディズニー。1930年代の両者はまさに蜜月の関係だった。

 ディズニー作品にはアニメ化されたチャップリンが頻繁に登場。『ミッキーのポロチーム』(36年)はミッキーやドナルド・ダックらのキャラクターと、チャップリン率いる映画スターチームがポロで戦う短編だ。アニメのチャップリンは、ステッキが引っかかって落馬しそうになるなどのギャグを披露している。

 対して、チャップリン映画にもミッキーマウスが登場している。『モダン・タイムス』の真夜中のデパートで遊ぶシーンで、ヒロインのポーレット・ゴダードがミッキーのぬいぐるみを抱き上げる。チャップリン作品で他のキャラクターが登場するのは例がない。いかに両者がリスペクトし合っていたかがわかる。

 プライベートでも2人で競馬観覧を楽しむなど(その際、チャップリンは次回作の構想を語りその場で演技を始め、周囲の客は競馬などそっちのけでチャップリンの演技に夢中になった)友好関係は続いた。

 そんな2人の師弟関係が崩れたのは、第2次世界大戦だ。ロンドンの貧民の生まれで常に弱者の味方だったチャップリンは『独裁者』(40年)を作り、ヒトラーの全体主義に対して映画で平和を訴えた。アメリカ中西部の典型的な古き良き家庭で育ったウォルトは、アニメーターたちのストライキを「アメリカの価値観を壊す共産主義」とみなして弾圧。戦争が始まると軍事宣伝映画製作に邁進(まいしん)し、43年にはディズニー社の売り上げの90%以上は政府から受注した戦争宣伝映画だった。

 ディズニー社の作品からユーモアに富んだキャラクターやアニメの技術革新は消え、戦時色に染まってしまった。ストを弾圧したことで有能な技術者は流出。しかし、戦争に協力しなかったアニメ会社はどんどんつぶれたことを思うと、ウォルトの行いは苦渋の経営判断の結果でもあった。

 苦境にあったのはチャップリンも同じだった。戦争中に平和を訴えたことでFBIにマークされ、身に覚えのない女性問題をでっち上げられ、喜劇王の評判は地に落ちた。戦後も国をあげてのバッシングが続き、52年にはアメリカから事実上国外追放されてしまう。

 戦争は、2人の天才から多くのものを奪った。なにより、かけがえのない2人の友情を壊してしまった。

 ■大野裕之(おおの・ひろゆき) 脚本家、演出家。1974年、大阪府生まれ。京都大学在学中に劇団「とっても便利」を旗揚げ。日本チャップリン協会会長。脚本・プロデュースを担当した映画に『太秦ライムライト』(第18回ファンタジア国際映画祭最優秀作品賞)、『ミュジコフィリア』(11月19日公開予定)。先ほど『ディズニーとチャップリン エンタメビジネスを生んだ巨人』(光文社新書)を上梓した。

zakzak

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