意外と知らないディズニーとチャップリン

キャラクター・ビジネスを「発明」「育てる」

 1930年代、チャップリンはウォルト・ディズニーの才能を見抜き積極的に支援した。『街の灯』(31年)の併映作品にミッキーマウスの短編を選び、チャップリンが創設した配給会社でディズニー作品を配給。おかげで広い層にディズニー人気が波及していった。

 世界初のカラーによる短編アニメ『花と木』(32年)がアカデミー賞に輝くなど、映画界で地位を築いたウォルトはさらなる挑戦をする。アニメといえば短編作品しかなかった当時、前代未聞の長編『白雪姫』(37年)を企画したのだ。当然、誰もが反対する中でチャップリンだけは彼を応援した。そして長編作品の極意として「主人公に感情移入するためのストーリーの大切さ」を伝授した。ウォルトはストーリー会議ですべての役を演じてみるのが常だったが、彼の演技はチャップリンそのものだったという。

 創作面だけでなく、ビジネスでもチャップリンは多くを教えた。『白雪姫』は大胆な企画ゆえ配給交渉が難航したが、チャップリンは「これを参考にしなさい」と自分の作品の経理書類一式を見せて、ウォルトはその通りに映画館と交渉して映画は大ヒットした。このように惜しげもなく伝授したのも、チャップリンはウォルトを自分の後継者だと感じていたからだろう。アクションの面白さで見せるサイレント喜劇の伝統は、ディズニーらのアニメが引き継いだ。まさにチャップリンとウォルトは「師匠と弟子」の関係だった。

 その後、このエンタメ界の師弟は二人三脚で映画界に新しいビジネスを興すことになる。

 ウォルトがチャップリンに初めて面会したとき、喜劇王は「自分の作品の権利は他人の手に渡しちゃだめだ」と著作権の大切さを説いたことは前に書いた。実はチャップリンは映画の著作権を確立したパイオニアの一人だ。17年に、彼の人気にあやかって同じ扮装(ふんそう)で映画に出演した偽チャップリン俳優に、彼はおなじみの扮装を使わないよう裁判を起こし勝訴した。

 「キャラクターの権利」を法的に認めさせた画期的な判決となった。彼は「ちょびひげに山高帽」の権利を確立し、キャラクターグッズ販売を始めた。ウォルトはそのノウハウを受け継ぎ、ミッキーマウスをはじめ多くのキャラクターでグッズ販売を展開し、やがて映画の興行収入を超えるまでになる。

 今や一大産業となった「キャラクター・ビジネス」はチャップリンが発明し、ディズニーが大きく育てたものだった。

 ■大野裕之(おおの・ひろゆき) 脚本家、演出家。1974年、大阪府生まれ。京都大学在学中に劇団「とっても便利」を旗揚げ。日本チャップリン協会会長。脚本・プロデュースを担当した映画に『太秦ライムライト』(第18回ファンタジア国際映画祭最優秀作品賞)、『ミュジコフィリア』(11月19日公開予定)。先ほど『ディズニーとチャップリン エンタメビジネスを生んだ巨人』(光文社新書)を上梓した。

zakzak


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