コロナ禍が助長するこころの病

菅首相の退陣も「適応障害」の可能性…過度のストレスが影響か

過度なストレスがかかっていた菅首相(共同)
過度なストレスがかかっていた菅首相(共同)

 長引くコロナ禍。デルタ株をはじめ次々と現れる変異株の影響で、この先も“ウィズコロナ”社会が続くでしょう。そこで心配されるのが、日本人のメンタリティーです。こころを病む人は増え続け、心療内科や精神科は患者さんの来訪が絶えません。最近の報道を元に、その実態を3回にわたって追います。

 ウィズコロナ社会ほど、ストレスフルな社会はありません。なにしろ、行動は制限され、言動すらいままで以上に気を使わなければならないからです。そのため、「適応障害」の症状を見せる人が増えています。

 適応障害は、簡単に言うと、過度のストレスに適応できないために、精神や身体に異常をきたすことです。さまざまな症状が現れますが、日常生活をうまく送れなくなる疾患です。うつ状態に陥ったり、判断力が悪くなったり、あるいは突然、攻撃的になったりすることがあります。

 その意味で、これまでの菅義偉首相の行動、言動を見ていると、適応障害では? と思うことがしばしばありました。

 今回の政局を招いた総裁選不出馬ですが、「コロナ対策に専念したい」「総裁選との両立は難しい」は、まったく理由になっていません。支持率の低下、党内での「菅降ろし」が理由なのは誰にでもわかります。なのに、このように強弁してしまうのは、本人が本当にそう信じ込んでいるか、あるいは、現実から逃避したいかのどちらかでしょう。

 不出馬宣言後、菅首相はぶらさがり会見を一方的に終え、記者団から「もっと丁寧に説明してください」と言われてもスゴスゴとその場を立ち去りました。私はその様子を見て、首相には猛烈にストレスが溜まっている、これ以上は無理と思ったものです。もし会見を続けていたら感情のコントロールが利かなくなっていたでしょう。

 適応障害に至る行動・言動のパターンを見ると、最初は、その範囲がどんどん狭くなっていきます。さらに、行動・言動の結果に罪悪感を持たなくなる傾向も見受けられます。その結果、ものごとがうまく進まなくなると、今度は自分を過度に責めてしまい、うつ状態に陥るようです。

 総裁選の前に、衆院を解散しようとし、その案がメディアに漏れて安倍晋三前首相と麻生太郎副総理に反対され、小泉進次郎環境相にも止められました。そこで行き詰まったのは攻撃性が増し、判断力が欠如したためと考えてもよいでしょう。「原稿棒読み」会見をあれほど批判されても、一向に変えなかったことも、同じでしょう。

 身体的にはいたって健康ですが、精神的にはストレスに弱かったと思えます。東京五輪の開会式で、天皇陛下が開会宣言をされるとき、ボーッとして起立できませんでした。少し早く起立した東京都の小池百合子知事ともども注意力が散漫だった、というより、何かほかのことを考えていたように見えました。

 広島の平和記念式典での「原稿読み飛ばし」も過度のストレスによる注意力の低下です。このとき菅首相は「全身全霊で対応する」という言葉とは裏腹に、それができない状態に陥っていたと言えます。

 こうしたことが重なると、戦闘意欲が低下し、適応障害におけるうつ状態になりかねません。首相は、不出馬宣言前に側近に弱音をもらしていたと言われます。適応障害からの回復には、まずはストレスの対象から離れることです。菅首相にとっては、政治活動が最大のストレスでした。今後は引退も視野に入れるべきでしょう。

 ■吉竹弘行(よしたけ・ひろゆき) 1995年、藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)卒業後、浜松医科大学精神科などを経て、明陵クリニック院長(神奈川県大和市)。著書に『「うつ」と平常の境目』(青春新書)。

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