意外と知らないディズニーとチャップリン

実はアニメ界初の人気キャラ・チャップリン、元々は脇役だった「フィリックス・ザ・キャット」

 チャップリンに憧れショービジネスの世界に入ったウォルト・ディズニー。彼が作り出した唯一無二のキャラクター、ミッキーマウスは憧れの喜劇王がモデルだ。ウォルト自身はこう語る。

 「ミッキーのアイデアについては、私たちはチャップリンにかなりの借りがあると思っている。私たちは訴えかける何かが欲しかった。それで、彼の切なさのようなものを持つ、小さくてつつましやかなネズミを思いついたんだ。できる限り頑張ろうとする、小さなチャーリーのような…」

 姿形もチャップリンをモチーフとしていた。山高帽の代わりに黒い大きな耳。放浪者のきつい上着とぶかぶかの大きなズボンは、ミッキーの小さな上半身と丸くて大きなお尻のズボンになった。極端に大きな靴を履いている点も同じ。なにより両者とも小さなヒーローで、弱者の視点が大衆の共感を集めた。

 ところで、ミッキー以前の有名アニメキャラといえばフィリックス・ザ・キャットだ。1919年に登場した真っ黒な猫は世界を席巻し、アニメ史上初のスターキャラとなった。

 実はこの元祖アニメキャラの誕生にもチャップリンが強い影響を及ぼしていたことはほとんど知られていない。

 チャップリンが14年にデビューしてすぐに世界的な人気者になると、草創期のアニメ界は喜劇王のアニメ版を作りたがった。アニメプロデューサーのパット・サリヴァンはチャップリンと交渉し、18年にアニメ版チャップリンがドイツで大活躍する『いかにしてチャーリーは皇帝を捕まえたか』という作品をヒットさせた。これ以前に人気を博したアニメキャラはおらず、アニメ界初の人気キャラはチャップリンだということになる。

 さて、このチャップリンアニメの脇役に黒い猫が登場したのだが、サリヴァンはオリジナルのキャラとしてその猫を主役にシリーズを発表。それが『フィリックス・ザ・キャット』だ。サリヴァンはいう。「チャップリンは違ったポーズでの彼の写真を少なくとも30~40枚は送ってくれた。私たちは磨きをかけて、フィリックスの動きとして使った。チャップリンは私たちに大きな影響を与えた」

 フィリックスはディズニーに大きな影響を与え、手塚治虫はディズニーを模範とした。今や世界に影響を与える日本のアニメの遠い祖先にチャップリンがいたというのは興味深い話である。

 ■大野裕之(おおの・ひろゆき) 脚本家、演出家。1974年、大阪府生まれ。京都大学在学中に劇団「とっても便利」を旗揚げ。日本チャップリン協会会長。脚本・プロデュースを担当した映画に『太秦ライムライト』(第18回ファンタジア国際映画祭最優秀作品賞)、『ミュジコフィリア』(11月19日公開予定)。先ほど『ディズニーとチャップリン エンタメビジネスを生んだ巨人』(光文社新書)を上梓した。

zakzak

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