ドクター和のニッポン臨終図巻

医師・中村仁一 延命治療に疑問を投げかけた本の著者 まさに「有言実行の死」

医師・中村仁一(長尾和宏氏提供)
医師・中村仁一(長尾和宏氏提供)

 『大往生したけりゃ医療とかかわるな「自然死」のすすめ』。夕刊フジ読者の中にも、読んだ人は多くいるのではないでしょうか。この本が発売された2012年、くしくも僕も、『平穏死10の条件』という本を上梓。これをきっかけに、行き過ぎた延命治療に疑問を投げかけた本が数多く出版され、議論が活発になりました。

 本書の著者である医師、中村仁一先生が6月5日に御自宅で亡くなっていたことを最近知りました。享年81。死因は、肺がんとの発表です。

 講演会などで何度も中村先生とご一緒し、会うたびにその考え方に深く共鳴をし、勝手に「兄貴」とお呼びしていました。それなのに、訃報を知らぬまま3カ月も過ぎていたことに、寂しさを禁じ得ません。

 今の僕は、コロナ対策に関し町医者として具体的な発言をするたび、病院の先生に叩かれているようですが、9年前は、「平穏死」と口にするたび、やはり病院の先生に叩かれていました。

 「末期がんの人を家に帰す? 管1本もなく穏やかに死ねるわけがないだろう」

 「死は敗北だ。最期まで治療をするのが医師の使命だ」

 「死ぬ当日まで食べて笑える? そんな人は見たことがない」等々。そんな中、中村先生だけは僕の言っていることが正しいと味方をしてくれたのです。

 「高齢者のがんは、何も処置しなければ痛まない。だから僕は、最期まで何もしませんよ」と。

 中村先生の息子さんのブログによれば、昨夏に肺がんが判明したとき、「これで良かった。死期が分かり準備できる」と仰ったそうです。最期まで点滴は1度もせず、お世話になった医療は酸素吸入器ぐらいだった、と綴っています。

 亡くなる半月前から息切れが激しくなり、寝ていることが多くなったようですが、死の2日前には、マグロのお寿司を自ら箸でお醤油をつけて口に運び、旅立つその朝には、娘さんが作ったトンカツを数切れ召し上がったそうです。以下、息子さんのブログより抜粋します。

 〈最終段階の状態になった場合、セデーション(鎮痛剤などを使い意識レベルや痛みを低下させる処置)を行うのも手だそうです。しかしながら父は、やはり最後まで、我々に死というものはこういう物だという事を見せたいのか、使いませんでした〉

 高齢者の最後の仕事とは、自分の死を若い世代に見せる事だとかつて僕に話してくれたのを思い出しました。まさに「有言実行の死」…先生、僕は一生、貴方を越えられないでしょう。 (写真は筆者提供)

 ■長尾和宏(ながお・かずひろ) 医学博士。東京医大卒業後、大阪大第二内科入局。1995年、兵庫県尼崎市で長尾クリニックを開業。外来診療から在宅医療まで「人を診る」総合診療を目指す。この連載が『平成臨終図巻』として単行本化され、好評発売中。関西国際大学客員教授。

zakzak

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