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フキノトウの苦味成分「ペタシン」にがん増殖・転移の抑制の効果 岐阜大大学院の創薬研究グループが発見

平島一輝特任助教(提供写真)
平島一輝特任助教(提供写真)

 縄文時代から食べられている、日本原産のフキノトウ。フキのつぼみ部分で春先に芽吹き、天ぷらなどにして食べる苦味が特徴の山菜だ。その苦味成分として多く含まれる「ペタシン」に、がんの増殖・転移抑制の効果があることを、岐阜大大学院の創薬研究グループが発見した。

 平島一輝特任助教、赤尾幸博特任教授らは、薬効をもつ可能性がある植物(野菜・果実)の抽出物を系統的に独自に集めて抗がん活性を調べた。研究成果は、橋渡し研究(基礎研究から臨床開発までを一体的に行う研究)の一流誌『The Journal of Clinical Investigation』 9月号オンライン版に掲載されている。

 がん細胞の増殖や転移が抑制されるメカニズムには、細胞内の器官でエネルギーなどを作り出すミトコンドリアが関わっている。がん細胞は正常細胞と比べて活発にグルコース(ブドウ糖)やグルタミン(アミノ酸の1種。タンパク質の素)などの栄養素を取り込み、がんの増殖や転移に必要な核酸とタンパク質、エネルギーを効率的に合成することが知られている。

 これらの代謝を効率的に進めるためには、ミトコンドリアの電子伝達系(呼吸鎖とも。グルコースが分解されて水と二酸化炭素になり、そのエネルギーを利用してエネルギー分子のATPが合成される)と、その最初の反応が起こる、ミトコンドリアの内膜上の「呼吸鎖複合体I」から連鎖反応によって供給される「ATP」と「補酵素NAD」が必要だ。そこで、呼吸鎖複合体Iを阻害することによってそれらの生成を遮断することで、がんの増殖と転移を効果的に抑制できると考えられている。

 これまで、そのような働きをする化合物はいくつか報告されているが、ほとんどは活性が弱いか毒性が強く、がん治療に応用することができなかった。一部のがん細胞増殖抑制に効果があると近年話題になった薬に、糖尿病薬のメトホルミンやフェンホルミンがある。それらも呼吸鎖複合体Iを阻害する効果をもつが、ペタシンとはまったく異なる化学構造を持つ。研究によると、ペタシンはそれらより1700倍以上高い阻害活性と3800倍以上の高い抗がん活性を持つという。

 ヒトのがん細胞を用いたマウスモデルの実験では、乳がん、胃がん、大腸がん、膵臓がん、膀胱がん、前立腺がん、悪性黒色腫、肉腫、白血病など幅広い種類のがん細胞に対して非常に強い増殖抑制効果を示すことがわかった。さらにがん細胞をペタシンで処理すると増殖しないだけではなく、浸潤(周囲の組織に広がる)・転移の活性が大幅に低下することも突き止めた。最も大事なことは、正常組織にほとんど副作用を示さずに増殖・転移の抑制ができることだと赤尾教授は話す。

 「ペタシンは合成できるため、ペタシンを基礎とした新しい抗がん・転移阻害薬の開発が期待されます。また、安全性が比較的高いことから、がんの外科切除後の再発予防、がんの終末期医療のQОL(生活の質)向上、さらにがん予防への応用も考えられます。現在、ペットの肺転移症例を中心に安全性と効果について検証中です」

 もちろん、フキノトウやフキの食べ過ぎは禁物。ぺタシテニン(フキノトキシン)などの天然毒素が含まれているので、アク抜きも必要だ。適度に食べつつ、さらなる研究成果を待ちたい。(医療ジャーナリスト・石井悦子)

zakzak

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