マンガ探偵局がゆく

30年前ファッション雑誌で読んだ「借りぐらし」 小さな妖精カップルのささやかな寄生『東京コロボックル』

『東京コロボックル』を収録した『棒がいっぽん』
『東京コロボックル』を収録した『棒がいっぽん』

 これは去年の今ごろに届いていた依頼だ。

 「息子と一緒にテレビでアニメの『借りぐらしのアリエッティ』を観ていたら、20代半ばにファッション雑誌で読んだマンガを思い出しました。アリエッティたちみたいに人間に隠れて借りぐらしをする妖精(?)が登場する短いマンガでした。ちょうど今のダンナと半同棲(どうせい)していた時代で、ふたりで映画『ジュラシック・パーク』を観に行って、そのあとで告白されたことまで思い出しました。息子に読ませたいような気がするのですけど、コミックスなどはあるのでしょうか」

  (54歳・営業職) 

 『借りぐらしのアリエッティ』は、メアリー・ノートンの『床下の小人たち』を原作に、宮崎駿が企画・脚本を担当、米林宏昌が監督したスタジオジブリの劇場アニメ。「似たようなマンガ」というだけでは雲をつかむような話だが、依頼人が20代半ばで、『ジュラシックパーク』を観たころに読んだ雑誌、を手がかりに調査を進めた。依頼から1年も掛かったのはかなりやっかいな調査だったから。

 結論から言えば、依頼人が探しているのは、1993年にマガジンハウスの週刊誌『Hanako』で月1回、全7回にわたって連載された高野文子の『東京コロボックル』だ。

 毎回2ページのショートショート形式で、主人公は東京・落合のマンションに寄宿するコロボックルのOLとそのボーイフレンド。設定では、コロボックルはどこにでもいるのだけど、小さい上に食事はお米一粒程度なので、寄宿されている人間に気づかれることはないことになっていた。

 カノジョが働くオフィスは、寄宿主が勤める運輸会社のロッカーの上に忘れ去られた紙袋の中。同じく運輸関連の仕事をしている。カレシは人間に寄生する生き方を嫌って狩人を気取っているが、人間と暮らすことの便利さからは逃れられないでいる。

 そんなカップルのささやかな東京暮らしが描かれた作品だ。

 作者の高野文子は、70年代にニューウエーブマンガ家のひとりとして注目を集めた。『Hanako』誌上では、気ままな一人暮らしの女性を主人公にした『るきさん』を88年から92年にかけて月に1回連載して幅広いファンをつかんだ。

 1995年にマガジンハウスから出版された短編集『棒がいっぽん』に収録されており、古書などでの入手は容易だ。

 ■中野晴行(なかの・はるゆき) 1954年生まれ。フリーライター。和歌山大卒業後、銀行勤務を経て編集プロダクションを設立。1993年に『手●(=塚のノ二本に「、」を重ねる)治虫と路地裏のマンガたち』(筑摩書房)で単行本デビュー。『謎のマンガ家・酒井七馬伝』(同)で日本漫画家協会特別賞を受賞。著書多数。

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