有本香の以読制毒

誰が「国防の最高指揮官」に最適か 北がミサイル2発発射、総裁候補3氏の「第一声」比較 「言葉の力」火を見るより明らか

高市氏
高市氏

 防衛省は15日、北朝鮮が同日午後、日本海に短距離弾道ミサイル2発を発射したと発表した。変則軌道で約750キロ飛行し、日本の排他的経済水域(EEZ)の内側に落下したとみられる。北朝鮮は13日にも、新型長距離巡航ミサイルを試射している。中国の軍事的覇権拡大に加えて、日本にとって「安全保障上の深刻な脅威」といえる。自民党総裁選は17日告示(29日投開票)を迎えるが、新総裁・新首相は「国防の最高指揮官」となる。前哨戦でバトルを繰り広げる、岸田文雄前政調会長と、高市早苗前総務相、河野太郎行革担当相の危機意識と覚悟はどうなのか。ジャーナリストの有本香氏が分析した。

 ◇

 総裁選は17日告示である。正式な出馬会見を行ったのは、岸田氏と高市氏、河野氏の3人。「野田聖子幹事長代行も立候補か」と伝えられたが、16日朝時点ではっきりしない。

 出馬会見を終えた3氏が目下メディア出演を盛んにしていたなか、北朝鮮は15日午後、日本海に向けて弾道ミサイル2発を発射した。岸信夫防衛相は同日夜、日本のEEZに落下したとの推定結果を明らかにした。

 幸い、海上の船舶にも被害はなかったが、国の安全を揺るがしかねない一大事である。こうした時に、国内外にどんなメッセージ、第一声を発信できるか-。これは国のトップ、政治家の資質を測る1つの物差しだ。さっそく、総裁候補の3氏に当てはめてみたい。

 まず、元外相の岸田氏。自身のツイッターで次のように発信した。

 「本日、北朝鮮がまたもや弾道ミサイル2発を発射しました。政府によれば、今回のミサイルも変則的な飛翔(ひしょう)を行った可能性があります。私が提唱しているように、我が国の平和と安定を守り抜くためには、相手領域内でのミサイル阻止能力の真剣な検討も含め、ミサイル防衛能力の強化が不可欠です」

 極めて抽象的、具体策を一切示していない。しかも、発信時刻は15日午後6時58分。ツイートで引用したNHKの報道から6時間後の発信は、SNS時代の今日、いかにも遅い。

 次に高市氏。岸田氏より早く、同5時前に記者に対し、次の発信をした。

 「日本だけでなく、国際社会全体の脅威だ。各国と連携して抗議していくと同時に、防衛大綱の見直しも含めてミサイルに対しての防衛力をつけていかなければ、日本の国民の命も国土も守れない」

 防衛大綱の見直しにまで踏み込んだ言及は、勇気あるものと評価できる。高市氏は今日以前のメディア出演の際、たびたび「敵基地無力化」の手法について具体的に語っている。

 河野氏は出演していたテレビ朝日の情報番組内でのコメントだったためタイミングは最も早く、内容は次のとおりだった。

 「日本として情報収集能力と、日米同盟での抑止力を高めていくことが必要(中略)そういう意味で、いろいろと自衛隊のこれからのあり方も装備の面からしっかりと考えていく必要がある」

 1年前まで防衛相を務めていたにしては、ぼんやりとした発言だ。

 ここで思い起こされるのが、河野氏が防衛相だった昨年6月に突然表明し、自民党「防衛族」ともギクシャクした、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画停止の一件だ。

 今般の北朝鮮のミサイルは、不規則な軌道を描くもので迎撃は困難とされているが、かといってイージス・アショア計画停止とは無関係と切り離すのは早計だ。むしろ首相を目指す河野氏はこの機を捉えて、今後のミサイル防衛のグランドデザインの一端でも示すべきである。

 あちこちから、「有本は高市贔屓(びいき)だ」とお叱りを受けるのを承知の上であえて言えば、出馬会見においても、冒頭はっきりと、国の使命は「国民の生命と財産」「領土、領海、領空、資源」「国家の主権と名誉」を守り抜くことだと言い、「その使命を果たすために私のすべてをかけて働くことを誓う」と宣言したのは高市氏だけだった。

 北朝鮮のミサイル、中国の脅威、ロシアも北の空を脅かし、韓国も敵対行為を繰り返す現下、多くの国民が誰の言葉に力を感じるかは火を見るより明らかだ。

 出馬会見で「日本の民主主義を守る」と言った岸田氏に謹んで申し上げたい。民主主義国では、言葉こそ政治家の命ではないですか。

 ■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。

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