安全保障最前線

防衛省と自衛隊を叱咤激励する衝撃的な論文、米ランド研究所 新興技術導入遅れ指摘 この提言を無視する選択肢はない

東京都新宿区の防衛省(共同)
東京都新宿区の防衛省(共同)

 米国のシンクタンク「ランド研究所」は最近、防衛省・自衛隊に提言し、叱咤(しった)激励する衝撃的な論文を発表した。一読して、防衛省・自衛隊を子供扱いにしたような論文ではあるが、記述されている内容は妥当なものだ。私もランド論文と同様の主張をしてきた。

 ランド研究所は、自衛隊に対して、「マルチドメイン(複数領域)防衛軍を目指すべきだ」と提言している。マルチドメイン防衛軍とは、米陸軍の作戦構想「マルチドメイン作戦」が遂行できる部隊のことである。

 ランド論文が「マルチドメイン防衛軍」を創設するために提言した17の新興技術は、先進通信ネットワーク、人工知能(AI)、自律技術、ビッグデータ、最新のサイバー戦技術、量子通信、量子コンピューティング、量子センシング、3Dプリンティング、バイオ技術、指向性エネルギー兵器、最新宇宙技術、極超音速滑空体、マイクロエレクトロニクス、ナノテクノロジー、無人機だ。

 ランド研究所は、中国が新興技術の軍事利用を推進しているのに比し、日本の遅れを叱咤している。中国が重視する技術は、ランドの17技術とほぼ同じだ。そして、自衛隊が新興技術を軍事利用することによるメリットを列挙している。

 第1に、サイバー攻撃、電子戦、マイクロ波指向性エネルギー兵器の使用により、攻撃者は明確な証拠を残すことなく攻撃できる。

 第2に、自律技術、AI、最新遠距離通信、量子コンピューティングなどを利用することで、戦争遂行を劇的にスピードアップできる。

 第3に、無人機やロボットなどは将来の戦争で中心的な役割を果たす。

 第4に、長距離でターゲットを非常に正確に攻撃することができる。

 第5に、ネットワークの安全確保と相手側のネットワークの破壊が紛争時における中心テーマになるため、電子戦やサイバー攻撃に対する防御が重要になる。

 第6に、従来の空・陸・海の領域加えて、電磁波、宇宙、サイバー空間の領域を作戦成功の中核になる。

 第7に、情報ドメインに関連する技術分野がますます重要になっている。他国は、紛争のすべての段階で、日本の認知機能(頭脳など)に悪影響を及ぼし、世論を操作しようとする。日本は、敵の大規模な偽情報・誤情報作戦に対処する必要がある。

 以上みてきたように、ランド論文は軍事専門家にとっては常識に沿ったもので、適切な提言だ。防衛省・自衛隊がこの提言を受けて、これをいかに活用するかが問題だ。この提言を無視する選択肢はないと、私は思う。

 ■渡部悦和(わたなべ よしかず) 元陸上自衛隊東部方面総監、元富士通システム統合研究所安全保障研究所長、元ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー。1955年、愛媛県生まれ。78年東京大学卒業後、陸上自衛隊に入隊。その後、外務省安全保障課出向、ドイツ連邦軍指揮幕僚大学留学、第28普通科連隊長(函館)、防衛研究所副所長、陸上幕僚監部装備部長、第2師団長、陸上幕僚副長を経て2011年に東部方面総監。13年退職。著書に『自衛隊は中国人民解放軍に敗北する!?』(扶桑社新書)、『中国人民解放軍の全貌』(扶桑社新書)など。

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