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ミシン業界に新潮流、手作り需要も追い風 「子供」「子育て世代」「高齢者」向けなどオリジナル商品投入 アックスヤマザキ・山崎一史代表取締役

 かつての「一家に一台」という時代から、縮小が続いてきたミシン市場で、子供用、子育て世代用、高齢者用などオリジナル製品を投入し、業界に新しい息吹をもたらしている。赤字で廃業も勧められた状態で経営を引き継いだ3代目は、どのように立て直したのか。 (中田達也)

 --子供用の「毛糸ミシンHug(ハグ)」シリーズが好調ですね

 「毛糸で縫うという、これまでになかったミシンで、市販の毛糸をかけるだけで簡単にスタートでき、自分のペースで動かすことができます。指が針のところに入らないような工夫もしており、STという玩具の安全基準もクリアしました。2015年の発売以来、累計販売台数は10万台以上です」

 --子供用製品を開発したきっかけは

 「ミシンが使われなくなった理由をいろんな人に聞いてみたところ、興味はあっても上糸や下糸をかけたりすることが難しい、小学校の授業で使って苦手になった、といった声がありました。そこで、小学校で習う前の補助階段のようなミシンを作ろうと考えました」

 --社内では反対の声もあったそうですね

 「当時は父親が社長でしたが、プレゼンすると『会社を潰す気か』と大反対でした。納得してもらうために既存のミシンを小型化するのではなくゼロから作り直し、約3年かけて開発しました」

 --勝算はありましたか

 「ちょうど商品を出すときに私が社長になったのですが、当時は円安などもあって赤字のピンチで廃業も勧められたほどで、社員には『1年間だけ信じてほしい』と伝えました。ただ、子供たちに新製品を試してもらったら、泣きながらケンカして取り合うほどの反応で、これはいけると確信しました。実際に発売2カ月で2万台が売り切れ、業績も翌年に黒字になりました」

 --続いて「子育てにちょうどいいミシン」も発売しました

 「子供用ミシンを発売した際に各地でイベントを開いたところ、親御さんから、自分もやりたくなったけど、家のミシンは重くて出せない、買っても置くところがない、欲しいデザインがない、といった声がありました。その“やらない理由”を反対にしたわけです」

 --小型で軽くておしゃれなミシンということですね

 「普通の小型ミシンでも4~5キログラムあるのを2・1キロまで軽量化し、本棚に入るサイズで、見せたくなるようなデザインにしました」

 --使い勝手に工夫も

 「コードレスで電池でも手軽に使えるようにしたほか、スマホでQRコードを読み取って作り方を見ながら操作できるようにしました。発売当時はコロナ禍でマスク不足だったので、作り方を急遽(きゅうきょ)アップしたところ反響が増え、最大3カ月待ちになりました」

 --高齢者向け製品も

 「ご年配の方はミシンを使える人がほとんどなんですが、視力の低下などの問題を解決する必要がありました。そこで、針の穴の糸通しをしやすくするために、ミシン本体が傾く仕掛けを作ったり、文字を大きくするなど、使う人をいたわるミシンを開発しました。ミシンには脳トレの要素もあり、プレゼント需要も見込んでいます」

 --ミシン市場は右肩下がりといわれてきましたが、流れも変わっているようですね

 「1999年の103万台から2019年に49万台まで減少したというデータもありますが、去年はステイホームで手作りが見直されたという追い風もあり、1・5倍の76万台になりました。われわれも昔はOEM(相手先ブランドによる製造)が中心だったのですが、いまは自社製品が9割ぐらいになっています。小さいメーカーですが、これを機にミシンの魅力を広めていきたいですね」

 ◆祖父が創業…入社当時に父が「実はピンチだ」 会社の保養所でアイデア生み出す「1人合宿」

 【アメフト】中学2年に陸上部のキャプテン、高校ではアメリカンフットボール部で1年からレギュラーを張っていた。

 「当時からベンチプレスは100キロを挙げていました。足も速くて力もあったのですが、天狗(てんぐ)になっていて、ケンカして部を辞めてしまいました。大学生のときにテレビをつけたら同じ部だった人が甲子園ボウルに出ていて、レールを外れたことに後悔ばかりしていましたね」

 【筋トレ】「中1から器具を使って筋トレをしていて、かばんにもダンベルを入れていました」といい、今でも続けている。

 「懸垂を30回のほか、腕立て伏せとダンベルなど。昔はベンチプレスも家でやっていました。週に3回やると気持ちも充実しますね」

 【家業】終戦直後に祖父が家庭用ミシンの製造を目的に創業した。

 「創業時は輸出中心でしたが、採算が合わなくなり、父の代で海外生産・国内販売になりました。それで業績がV字回復し、私が中学生のころには急にごはんのおかずが増えたり、家が新しくなったりしていましたね」と振り返る。

 だが、2005年に入社した際、「父親から実はピンチだと言われました。それから会社を継ぐまでの10年はビジネススクールや経営塾に通うなど、危機感を覚えてもがき続けてきました」。

 【家族】妻と2人の娘。「娘がサンタさんに『粘土かパパのミシン』と頼んでいたのがうれしかったですね」

 【好きなテレビ番組】ドラマ「スクール☆ウォーズ」や、NHKの「逆転人生」など。

 「落ちこぼれが巻き返したり、逆転するストーリーが好きです」

 【大事にしているもの】会社を継ぐときに父親にもらった書。《最高の名誉とは倒れないことではなく倒れる毎に立ち上がることである》と書かれている。

 【アイデア】定期的に会社の保養地にこもり、1人で「合宿」を行っているという。

 「30歳ぐらいからやり続けています。2泊3日ぐらいで、ノートに絶対にやることなど目標をひたすら書き込むうちに、アイデアがふと出てきます。これまで『もう一度ミシンが日の目を見るようにする』『デザイン賞を取る』といった目標もノートに書いていました」

 【会社メモ】ミシンの製造・販売を手掛ける。本社・大阪市。1946年創業、56年に会社組織化し、山崎ミシン製作所設立。海外向け家庭用ミシンから80年代後半に国内市場向けに転換。93年現社名に変更。2015年以降、子供用や子育て世帯用、高齢者用などのミシンを投入し、グッドデザイン賞金賞などを受賞、20年12月に大阪商工会議所主催の「大阪活力グランプリ2020特別賞」を受賞する。20年12月期の売上高10億円。

 ■山崎一史(やまざき・かずし)1978年8月生まれ、43歳。大阪府出身。近畿大商経学部商学科卒。機械工具関連企業を経て2005年にアックスヤマザキ入社。15年に同社の3代目として代表取締役に就任する。

zakzak

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