ゆで卵は簡単につくれるのに、なぜ「エッグマイスター」は3万5000台も売れたのか - イザ!

メインコンテンツ

ゆで卵は簡単につくれるのに、なぜ「エッグマイスター」は3万5000台も売れたのか

ITメディア
ゆで卵調理器「エッグマイスター」が売れている
ゆで卵調理器「エッグマイスター」が売れている

まったく料理をつくらない人でも、ゆで卵ぐらいはつくれるだろう。現在はお湯でゆでなくても、電子レンジでつくるゆで卵調理器やゆで卵をつくる専用家電も活用できるほどだ。

中には「ゆで卵って専用家電を使ってつくるほどのもの?」と思う人もいるだろう。ところが現在、あるゆで卵調理器がヒットしている。アピックスインターナショナル(大阪市)が2021年4月に発売した「エッグマイスター」のことである。

エッグマイスターは簡単なボタン操作で、最大4個のゆで卵を同時につくることが可能。手順は次の通り。

(1)専用のゆで卵ケースに卵を並べて本体にセット

(2)[ゆでる]と記された本体の水位線まで水を注ぎフタを閉める

(3)電源コードの本体側プラグを本体、電源プラグをコンセントに差し込む

(4)[メニュー]ボタンからメニューを選ぶ

(5)[加熱]ボタンを押す

細かく手順を分けたので面倒に感じるかもしれないが、難しくはない。メニューは「固ゆで」「半熟」「温玉(温泉たまご)」の3つから選べる。

おいしいゆで卵は、ただゆでるだけではできない

アピックスインターナショナルはデザイン家電や生活雑貨の企画・開発・販売を行っており、エッグマイスターのような調理家電のほか、加湿器、暖房機、扇風機、サーキュレーターなどを手がけている。

エッグマイスターが企画されたのは今から3年近く前のこと。社内でこんな話が出たことがきっかけになった。

「ゆで卵をつくるのって面倒臭いよね」

簡単につくれるとはいえ、好みの固さに仕上げるにはゆで時間を調整しなければならないし、夏場につくるとキッチンが暑くなる。「面倒臭い」のひと言は、こうした側面から発せられた。

「私はその場にいなかったのですが、開発メンバー間の会話でこの話が出ました。この話を聞いたとき、確かに面倒臭いと感じました」

こう話すのは商品開発部 商品開発兼広報担当の佐藤元紀氏。このひと言がきっかけで、面倒なゆで卵を自動でつくる商品が企画されることになった。

ゆで卵をつくる専用家電は珍しいものではなく、すでに競合品がいくつか発売されている。競合品を調査し、その結果を踏まえて仕様を決めることにした。

競合品を調べる中で分かったことの一つが、水蒸気で蒸してつくる方式が圧倒的多数を占めていたこと。本体空間内を100度以上の水蒸気で満せばいいことから機構が簡単にできるため、このタイプが主流になっていた。

また、ゆで卵のことをいろいろ調べるうちに、お湯でただゆでるだけではおいしいゆで卵はできないことが分かる。これはどういうことか? 佐藤氏は次のように話す。

「卵は100度以上のお湯でゆでると、白身に鬆(す)が入りボソボソとした食感になります。また、固ゆでしたときによく見られますが、黄身に80度以上の熱を加え続けると硫黄臭の発生と黒っぽい変色が起こり、味を落としてしまいます」

白身と黄身ではおいしく仕上げるための温度が異なる。エッグマイスターの開発では、この問題を克服することにした。

おいしいゆで卵をつくるポイントは温度制御。なぜエッグマイスターがゆでる方式を採用したのかというと、水蒸気で蒸し上げる方式は本体空間内の温度制御ができないからであった。ゆでる方式を採用することにしたので、水蒸気で蒸す方式ではおいしくつくることが難しい温泉卵も、簡単かつおいしくできることを目指した。

1万2000回にまで達した調理試験

「固ゆで」「半熟」「温玉」はそれぞれ、ゆでる温度と時間が異なる。つくるものに合わせてこれらを微妙にコントロールすることが求められることから、各メニューをつくるためのプログラムをつくり、本体内のICチップに組み込むことにした。

プログラムは、湯温が固ゆで、半熟の場合は93~95度、温玉の場合は70度前後に達したら水を沸かすヒーターが切れ、ある温度まで下がったら加温し一定の温度帯を維持し一定時間ゆでる、といったもの。本体底面に水温を測るセンサーを搭載し、センシングしながら湯温を制御する。

試作をつくっては調理試験を実施し、結果を踏まえてプログラムの修正を繰り返した。メニューが固ゆで、半熟、温玉と3つあるので、実施した調理試験は1万2000回ほど。予想をはるかに超える試験回数となった。

手間取ったのは温玉だった。「全部同じ出来栄えにするまで手こずり、最後は卵を見るのも嫌になったほどです」と振り返る佐藤氏。また半熟については、黄身の仕上がり具合をどの程度にするかで迷ったという。なかなか結論が出ず、最後は社内で好みを調べ最も多かった回答を基準とすることにした。

蒸し料理のレシピも社内で開発

エッグマイスターはゆで卵のほかに、蒸し料理もつくれる。蒸し料理もつくれるようにしたのは、社内にあった「必要とされているのか?」「ゆで卵だけしかつくれないものが売れるのか?」といった懐疑的な声に対応するため。汎用性を高めることで理解を得ることにした。

「最初は『オムレツがつくれればいい』とだけ考えていました」と話す佐藤氏。オムレツのつくり方は次の通り。

(1)[むす]と記された本体の水位線まで水を注ぐ

(2)溶き卵を付属のオムレツケースに流し入れてからゆで卵ケースにセット

(3)本体のフタを閉めたら電源コードの本体側プラグを本体、電源プラグをコンセントに差し込む

(4)[メニュー]ボタンを押して「蒸す」を選び[加熱]ボタンを押す

溶き卵を蒸すだけなので、レシピは比較的早くできた。こうしたことから、ほかにもレシピを考案することになった。蒸し料理専用ケースとレシピブックが付属する。

レシピブックに掲載されている料理は、サラダチキンやカスタードプリンなど全部で10品。メニューは、写真映えを意識する人たちがつくってみたいと思われるものを選んだ。レシピは料理研究家や管理栄養士といった専門家ではなく、料理が得意な社員と開発メンバーが話し合ってつくった。

商品より料理を大きく見せたパッケージデザイン

エッグマイスターは年間1万台を目標に販売を開始。社内では「年間8000台売れればヨシ」と思われていたという。

だがフタを空けてみると、販売台数は発売から1カ月で目標の300%に当たる3万台を突破。現時点の販売台数は3万5000台を超えている。

短期間でこれほど売れた最大の要因は、あるテレビ通販会社の商材に採用されたことにあった。開発中に偶然、テレビ通販会社の商品選定担当者と話す機会があり、そのとき、エッグマイスターの話をしたところ興味を持ち、商材として取り扱ってくれることになった。

「テレビ通販会社によれば、エッグマイスターのような尖った商品も『発売と同時に一気に視聴者に訴求すれば売れるのではないか?』ということでした」

佐藤氏はエッグマイスターがテレビ通販会社の商材に選ばれた理由をこう明かす。番組を見て直接購入するのはもちろんのこと、放送後、家電量販店の店頭で見かけたときに購入に至るケースも見られるという。

店頭で注目を集めるために気を配ったのが、パッケージデザインであった。特徴として、最も強調したのは商品ではなく料理であること。極厚のエッグサンドイッチを半分に切って断面を強調したカットをメイン使った。

商品よりも料理を強調したのは、「これで何ができるかを示したかったため」(佐藤氏)。インスタ映えするレベルの料理のカットを大きく使うことで、店頭で目立たせ、注目を集めることにした。

他社とのコラボも進行中

ユーザーの声で目立つのが、温泉卵に関すること。「簡単にできておいしい」といったポジティブな声が多いそうだ。仕上がり具合で悩んだ半熟卵については、好みより「硬い」「緩い」のいずれも聞かれ、反応が真っ二つに分かれている。レシピについては追加の要望が多く、今後は同社のWebサイトで新レシピの紹介が考えられている。

また現在、他社とのコラボレーションも進行中。食品メーカーと組み新たなレシピづくりを模索しているところだ。

「将来はバージョンアップも考えたい」と佐藤氏は話すが、時期については見通しが立たないという。世界的な半導体不足によりICの調達が困難になっているためだ。このため、エッグマイスターの生産も一時ストップしたことがあった。家電量販店向けの出荷は現在でも制限をかけているほどで、売れ行き好調な流れに水を差された格好だ。

「工場から『来年夏に使うICを確保してほしい』と言われています」と打ち明ける佐藤氏。不安定な状況が改善されるのはいつになるのだろうか。

関連記事
  1. ファーウェイCFO逮捕でバレてしまった「中国という国の本質」
  2. みずほは「F」「D」「I」に3分裂か OBに根強い旧行意識
  3. 内田理央のおっぱい写真にファン大興奮「一瞬ビビった」「萌え死んだ」
  4. 【住宅クライシス】タワマン管理契約と修繕工事の深い関係