医療経営学者が明かす「コロナ医療危機」の根源 制度の課題と背後に潜む病院の経営難 - イザ!

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医療経営学者が明かす「コロナ医療危機」の根源 制度の課題と背後に潜む病院の経営難

田村憲久厚労相(右)と小池百合子都知事は病床確保を要請している
田村憲久厚労相(右)と小池百合子都知事は病床確保を要請している

 新型コロナウイルスの感染が全国規模で拡大し、医療崩壊が現実のものとなっている。中央大大学院教授で総合内科専門医の真野俊樹氏(医療経営学)は、新著『新たな医療危機を超えて コロナ後の未来を医学×経済の視点で考える』(日本評論社)で、コロナ禍によって露呈した日本の医療制度の限界を指摘し、現状の課題と改革案を提言する。

 世界に誇る病床数を有する日本で、なぜ医療逼迫(ひっぱく)や医療崩壊の危機となったのかは大きな論点だが、真野氏はコロナ禍以前からの医療制度の課題と、背後に潜む病院の経営難に注目する。

 真野氏は「世界と比べて病床は多くても高齢者医療や生活習慣病対応に軸足を置いていたため、1床当たりの運用に必要な人員が少なくて済んでいた。さらに経営が厳しく、潤沢に人員が確保できない状況を招いている」と語る。

 同書によると、全国の病院の利益率はコロナ前の2019年4月には1・5%だったが、20年4月はマイナス8・6%、コロナ患者の入院を受け入れた病院ではマイナス10・8%と赤字経営を余儀なくされている。

 日本の医療行政は、独立行政法人化や民営化など「公から民へ」という方向で進められてきたが、民営化しても財政面は診療報酬で公的にカバーされる制度のアンバランスさは残った。病院側が医療の質の向上を望んでも、公定価格に縛られた収益構造が経営難の一因になっているという。

 コロナ禍による医療の逼迫が深刻化するにつれ、厚生労働省と東京都は、都内の全ての医療機関に対し、新型コロナ患者向けの病床確保と最大限の患者受け入れを要請。正当な理由なく、要請を拒んだ場合の勧告や、従わなかった場合の医療機関名の公表もできる強制策を打ち出した。

 ただ、効果について真野氏は「民間でも力のある病院があることは確かだが、強制策をちらつかせたところで、従来の構造が続く限り民間が従うか、あるいは従う能力があるかは不確かだ」とし、感染症対応の医療を強化するには、抜本的に構造を見直す必要を訴える。

 真野氏が強調するのは「公的な病院」の役割だ。国公立病院のほか、旧社会保険病院や旧厚生年金病院、旧社会保険庁系の病院をまとめる地域医療機能推進機構(JCHO)などの独立行政法人、国家・地方共済組合の病院や、民間でも公益性の高い医療を担う社会医療法人などを指す。

 真野氏は、公立病院は採算を度外視してでもコロナ専用病床を設け、民間でも普段は閉鎖している余剰ベッドをいざというときの隔離病床として税金で維持するなどの施策が必要だと説く。

 「JCHOは全体としては黒字経営だ。社会医療法人には、国が指示する医療に協力する代わりに税金を優遇されている。その他の民間病院については、規模や機能を行政が把握し、受け入れ可能な病院とそれ以外の病院を区別して行政が指示するしかないのではないか」との見解を示した。

 ■真野俊樹(まの・としき) 中央大大学院戦略経営研究科教授、多摩大大学院特任教授。臨床医を経て製薬企業のマネジメントに携わったほか、国立医療・病院管理研究所協力研究員、昭和大医学部公衆衛生学専任講師などを歴任。

zakzak

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