【やられの美学 ニッポン悪役列伝】成田三樹夫 ニヒルとユーモラス併せ持つ希有な存在 - イザ!

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やられの美学 ニッポン悪役列伝

成田三樹夫 ニヒルとユーモラス併せ持つ希有な存在

インパクトのある悪役だった
インパクトのある悪役だった

 スラリとした身体と端正なマスク。低く印象的な声。ニヒルな悪役といえば、成田三樹夫である。

 時代劇での悪役の傑作は、1965年公開の『座頭市地獄旅』だ。成田は、主人公の座頭市(勝新太郎)と知り合った将棋好きの浪人・十文字糺(ただす)。十文字は、自分のせいで破傷風になった少女を助けるために金が必要になり、困っている市に、自らが大道でやっている「十文たたき」の芸を替わってやると言い出す。おかげで金を稼げた市だったが、ある事件をきっかけに十文字と市の間には、殺気が漂うようになる。

 「旦那の仮の名は『十文でたたかす』ってしゃれですかい」という市に苦笑いを返す十文字。無頼の空気とどことなくユーモアを感じさせる。成田にしか出せない敵役スタイルだ。そしてクライマックス、十文字と市は箱根の道を歩きながら、頭の中で将棋を指す。一手さすごとに高まる緊張感。シリーズ屈指の名場面のひとつだ。

 そんな成田がまったく違う顔を見せたのが、78年の深作欣二監督の映画『柳生一族の陰謀』の京都の公家・烏丸少将(文麿)だ。「ほほほほ」と笑いながら、徳川崩壊と王政復古を狙う。外見は烏帽子(えぼし)をつけた白塗りのお公家フェイスだが、きえーっと奇声を発し、華麗な装束をひらひらさせながら、次々と侍や忍びの者たちを斬り捨てるのである。ほとんど物の怪のような奇怪な剣豪公家は強烈な印象を残し、ドラマ化された「柳生一族~」にも登場。白馬に乗り、供を連れて優雅に林の道を進む少将は、馬を止めて待ち伏せする柳生十兵衛(演じるは19日に急逝した千葉真一)に言い放つ。

 「出ておじゃれ!」「姿は隠しても獣はニオイでわかりまするぞ!」

 剣もすごいが、鼻まできく。恐ろしいお公家だが、やっぱりどこか、おかしみがある。

 現代劇では『仁義なき戦い』や『探偵物語』に出演。成田演じる服部刑事が工藤俊作(松田優作)を呼ぶ「工藤ちゃ~ん」はモノマネもされた。時代劇では千葉との共演が多い。千葉が主演した『影の軍団』では、シリーズの中で紀州頼宣、大岡忠光、井伊直弼など敵方のボスを演じ、千葉率いる伊賀忍者たちを恐れさせた。

 晩年、タモリの『今夜は最高!』に出てしゃれたトークと素顔も見せた。読書家で句集も遺している。90年、55歳での旅立ちはあまりに早く、多くのファンに惜しまれた。 (時代劇コラムニスト、ペリー荻野)

 ■成田三樹夫(なりた・みきお) 1935年1月31日~90年4月9日、55歳没。山形大学中退後、59年、俳優座養成所に第12期生で入所。64年に映画『殺られる前に殺れ』で正式デビュー。

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