《がん免疫治療薬「オプジーボ」の特許をめぐり、ノーベル医学・生理学賞受賞者の本庶佑(ほんじょ・たすく)京都大特別教授が、小野薬品工業(大阪市)を相手取り約262億円の支払いを求めた訴訟は2日午後、大阪地裁で本庶氏の本人尋問が行われた。本庶氏と小野薬側の代理人弁護士との間では、米メルク社から小野薬側が得た和解金200億円超の配分をめぐり、感情むき出しのやり取りが続いた》
--平成26年11月に京都大学で開かれた会合の時点で、配分の割合は意に沿う形ではなかったのではないか
本庶氏「何回も申し上げている通り。当初の契約通りの最低限の数字があって、そこから上乗せをしてほしいということだ。従来の配分額だったら、(金銭は)いらないとは言っていない」
《26年10月、京都大で小野薬と面談した際、本庶氏が担当者に対して「はした金」と発言。この意図について、小野薬側の弁護士から繰り返し質問が投げかけられた。両者は時折、互いの言葉を遮るような応酬を繰り広げた》
--「はした金」という言葉は言ったか
本庶氏「はした金という言葉は使った。18年の契約書で示された額から十分な上乗せがなされていない。この配分額では、国際レベルからはかけ離れていると、友人からも言われた。常識とは違っており、これははした金にすぎないのではないか、と申し上げた」
《本庶氏と小野薬は18年4月、本庶氏が発見した免疫を抑制するタンパク質「PD―1」関連の医薬品を、①小野薬側が直接製造、販売した際には販売高の0・5%②別会社からのロイヤルティーについては販売高の1%-を、小野薬が本庶氏側に支払う旨の契約をした。「はした金」が何を指すのかについて、小野薬側の弁護士は小野薬側が支払いの意向を示したメルク社からの和解金の40%についてだったと位置づける。これに対し本庶氏側は①②の配分割合のことだったとし、食い違っている》
--小野薬の提案は、あなたにとっては、はした金だという意味なのか
本庶氏「この言葉は使ったが、(和解金の40%支払いの)提案について言ったのではない。小野薬は(18年の契約に基づく)従来の配分額を変えない意向を示したから言った」
--はした金といった理由は
本庶氏「小野薬の状況からすると、はした金だという意味だ」
--全体の何%だと、あなたにとって適正の配分額なのか
本庶氏「(小野薬が得るロイヤルティーの)50%です。でもこれは理想形。小野薬は、コストフリーで独占的優先権を得ている。(小野薬が得た)収入に比べると、無きに等しいコストで収入を得ている。私が知財を出し、小野薬が製品を出した。理想を言えば半分ずつだろう」
--どの薬品会社も尻込みするような開発に、小野薬は協力した。当時、あなたは感謝をしていたのではないですか
本庶氏「当時、というのはいつを指しているのかわかりませんが。パーセンテージで配分額を決めることは、売り上げの高い低いにかかわらず互いにリスク軽減につながる。大変フェアなやり方ではないですか」
《本庶氏と小野薬が結んだ18年4月の契約をめぐり、本庶氏は①について5%を、②について50%のロイヤルティーを、求め続けていた》
--①5%②50%のロイヤルティーは今でも適切だと思うか
本庶氏「理想としてはそうだ」
《小野薬側の弁護士からの質問には、時々ヒートアップしながら答えていた本庶氏。続く裁判官からの質問には淡々と受け答えをした》
--(小野薬がメルク訴訟で得た和解金の40%支払いについて)やり取りを書面に残すとか、文書化する機運はなかったのか
本庶氏「今から考えれば、すべきだったと思います。しかし、時間的な制約が迫る中、膨大な資料を集めて、電子化しないといけない。そのうえで、業務に忙殺されてしまっていた。それに、小野薬を信頼していた。社長が言ったことが突然なくなるということは考えていなかった。また、京都大学に寄付する話もあり、別の形での契約になるとも考えていた」
《本庶氏への尋問は終了し休廷。小野薬の相良暁(さがら・ぎょう)社長への尋問へと移っていく》