秋は台風や長雨による風水害が起こりやすい季節だ。普段から浸水被害が発生したら…と想定し、身に危険が差し迫るよりも前の避難を意識しておきたいところだが、避難行動をおっくうだと感じる人は多い。特に高齢になるほど、その傾向は顕著になる。
今年2月、シニア向け女性月刊誌を発行する「ハルメク」(東京)の生きかた上手研究所が、20~70代の女性900人に防災意識調査を実施した。
すると60代(150人)の60%、70代(同)の66%が災害時に「自宅にとどまりたい」と回答。同じく「避難所に避難したくない」との回答も、60代38%、70代40・7%と、他の世代に比べて高く、高齢になるほど避難行動に消極的な様子がうかがえた。
年を重ねるほど避難行動に後ろ向きになるのはなぜか。同研究所の梅津順江所長は、「そもそも天候が悪い時に外に出るのが面倒でハードルが高い。はじめは避難情報のアラート音に反応していた人も、頻繁に鳴る音に慣れてしまい、怖さが薄れていったということもあるのでは」とみる。子育てが終わり自宅をバリアフリーなどに改装した際、耐震構造も強化した人たちは「うちは頑丈だから大丈夫」と自信を持ってしまう場合もあるという。
そもそも災害や防災への関心が薄い人もいる。梅津さんはそうした人に向け、「いきなり避難というのはハードルが高い。避難を促すよりは、防災頭巾は避難所で枕としても使えるといったような、ちょっとした防災の知恵を共有することから取り組みを促し、関心をもってもらうことが大事」と話す。
旭化成ホームズくらしノベーション研究所の松本吉彦さんは、「高齢の親を持つ子供世代が、親が暮らす地域のハザードマップを確認し、風水害の危険性が高まってきそうな時は、事前に、声掛けや、可能であれば車で送迎するなど、手を貸すようにするのが現実的だ」と話す。
ほかにも、松本さんは、「孫から言われると素直に話を聞く人もいるようだ。避難に消極的な親に向けて、普段から、『台風来そうになったら、うちに来てね』と孫から声を掛けておくのもいいでしょう」と助言する。
遠方に親が暮らす場合などの支援方法に課題もあるが、できる取り組みを家庭で考えておくのがよさそうだ。(津川綾子)