アフガン出身難民選手「祖国は心の中に」笑顔で終幕

産経ニュース
最後のレースを終えて引き揚げる難民選手団のアッバス・カリミ=30日、東京アクアティクスセンター(桐原正道撮影)
最後のレースを終えて引き揚げる難民選手団のアッバス・カリミ=30日、東京アクアティクスセンター(桐原正道撮影)

祖国はいつも心の中にある-。東京パラリンピック難民選手団のアフガニスタン出身、アッバス・カリミ(24)が30日、競泳男子50メートル背泳ぎ(運動機能障害S5)に登場した。「歴史をつくる」とメダルを目指したが予選で敗退。大会を去ることになったが、どんなに困難でもあきらめない姿を体現して見せた。それは、政情不安に陥る祖国アフガンの人々にも届いたはずだ。

生まれたのは首都カブール。生まれつき両腕がなくいじめにあったが、13歳で始めた水泳に救われた。最初は腕なしで泳ぐなど信じられなかったが、水の中ではなぜか自由になれた。

当時、米国主導の民主化が進められていたが、自身はイスラム原理主義勢力タリバンが標的にする少数派ハザラ人という理由で差別や迫害を受けた。「もうこの国に未来はない」。そんな思いを抱え、16歳で祖国を離れる決断をする。

密航業者の車や自分の足で山を越え、イラン経由でトルコに密入国。難民キャンプを約4年間転々としつつ水泳だけは続けた。そして、フェイスブックに投稿した泳ぐ動画が難民選手を支援する米国人の目に留まり、2016年に米国で競技人生をスタート。翌17年の世界選手権では難民選手初の銀メダルを獲得するなど、急成長を遂げた。

「世界の難民の代表として、希望を与えるために来た」。大きな使命を胸に挑んだ東京大会だったが、開幕直前、自身を迫害したタリバンが生まれ故郷のカブールを制圧。複雑な思いを抱え、大舞台に臨んだ。

30日、最後の種目となった50メートル背泳ぎ予選。体全体を使って懸命に体を前に推し進めたが、思うように力が出せず、最下位に終わった。だが、24日の開会式では選手団の旗手を務めあげ、27日の50メートルバタフライでは決勝で敗れたものの自己ベストを記録。東京に確かな足跡を刻んだ。

「アフガンはいつも心の中にある」。大会中、祖国について語った唯一の言葉だ。30日のレース後は取材に応じなかったが、「できることはやった」と言わんばかりの笑顔を見せ、会場を後にした。(桑村朋)

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