深作監督に試されてる?と入れ込み…あの大物に代わって下品な役でも豪快にこなした千葉真一さん追悼寄稿 - イザ!

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深作監督に試されてる?と入れ込み…あの大物に代わって下品な役でも豪快にこなした千葉真一さん追悼寄稿

豪快なサムライだった千葉さん。
豪快なサムライだった千葉さん。

 新型コロナウイルスによる肺炎のため、19日に82歳で急死した千葉真一さん。千葉さんの著書の編集にかかわった編集プロダクション代表の飯田達哉氏がその豪快な人柄をしのんだ。

 千葉さんの死は残念としか言いようがない。

 今から10年ほど前、千葉さんが武士道について語った『千葉流 サムライへの道』(2010年、ぶんか社刊)の編集にかかわった。お会いした千葉さんは白地にハートマークをいっぱいあしらったアロハシャツといういで立ち! 華やかなオーラに満ちていた。

 生い立ちから出演作までさまざまなことを聞いたが、尊敬してやまない師として挙げたのは、空手の師、大山倍達、東映の先輩、高倉健、そして深作欣二監督の3人。

 健さんで印象深かったのは、千葉さんが俳優を辞めようと思い悩んだときの一件。

 当時の東映は組合が強く、撮影も時間通りにきっちり終わっていた。「それでは映画が撮れない」と怒った千葉さんは組合の委員長ともめ、転倒させてけがをさせてしまい、大問題になった。

 失望した千葉さんは「もう俳優を辞めよう」と思ったが、何かと目をかけてくれていた健さんがやってきた。

 「『ちょっと俺についてこい』と言うんで、どこに行くんだろうと思ったら、組合から撮影所長のところまで行って、一緒に頭を下げてくれたんです。思わず涙が出ました」

 深作監督とは、初監督作品が千葉さんの初主演作という運命的な出会いをしている。そんな2人が組んだ傑作が『仁義なき戦い 広島死闘篇』。

 千葉さんは狂犬のようなヤクザ、大友勝利を演じたが、当初は北大路欣也さんが演じることになる山中正治役だった。ところが、北大路さんが「大友は下品過ぎてどうしても演じられない。山中をやらせてほしい」と会社に訴えてきたのだ。

 北大路さんは東映の大看板だった市川右太衛門の御曹司。無碍に断ることもできないので、プロデューサーらが千葉さんを説得することに。

 山中役は、もともと千葉さんが好演した『日本暗殺秘録』のテロリスト、小沼正をイメージして笠原和夫さんが脚本を書き、「ぜひ千葉真一で」と託された役。千葉さんは納得できず、「それならもう自分は降りる」と折れなかった。千葉さんはそのときのことをこう振り返った。

 「この時、宣伝部員が一人だけ残って、酒を飲みつつ話を続けたんです。深作監督も交代を承諾しているというので、どういうつもりだと考えたけど、ふと、『千葉ちゃんは小沼正をやったけど、もういっぺん同じようなことをやることになるぞ。それより全然違う役をやるほうが今と違った千葉を出すことができるんじゃないか』という監督の声が聞こえた気がして。俺は試されているのかと思い、交代を承諾しました」

 そこからは千葉さんは大友役に入れ込んだ。

 「モデルとなったヤクザが梅毒持ちで唇が厚かったんで、割り箸で唇を裏返してすごみ、股間をかきむしるようにしたんです(笑)。それで『あれら、オ×コの汁で飯食うとるんぞ!』なんて叫ぶんだから、欣也ちゃんが『できない』と言って当然なほど強烈なキャラクターでしたね(笑)」

 師と仰ぐ3人もすでに鬼籍に入っている。あちらの世界でも映画を語り、空手で組み合い、楽しく過ごしていることを願ってやまない。

 ■飯田達哉(いいだ・たつや) オフィス・トライアイ代表。スポーツ専門誌編集長を経て現職。スポーツ、グルメ、芸能など趣味・実用書を中心に編集・執筆を行っている。

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