【定年後の居場所】孫の成長に想う「センス・オブ・ワンダー」 高齢者も学べる不思議な感性 - イザ!

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定年後の居場所

孫の成長に想う「センス・オブ・ワンダー」 高齢者も学べる不思議な感性

 娘夫婦と孫が時々遊びにやってくる(やってきてくれる)。家が一気ににぎやかになるとともに、こちらの体力も試される。

 3歳になった兄は、リビングで私に向かってくる。少し前は「○○レンジャー」だったが、先日は「きめつのやいば(鬼滅の刃)!」と叫び、うって変わった真剣な表情になって悪者のおじいちゃんをやっつけに来る。

 ケガをさせてはいけないので離れながら、かつて国際プロレスに所属していたシャチ横内の十字チョップで応戦する。まだ両者の体力差は歴然だが、のりの容器(文具)という凶器を持ち出して振り回す。また1歳半になる妹が兄の真似をしたくて襲い掛かってくる。

 沖識名(おき・しきな)やユセフ・トルコといったレフェリーもいないので孤軍奮闘。このままでは1年もすれば、苦しくなるのは目に見えている。新しい技を身につけなければならない。

 気分転換のため一緒に散歩に出る。1年少し前は、私の人さし指をぎゅっと握って近所を散歩していたのに、今は一人ですたすた歩く。消火栓のマンホールを指さして「消防車だ!」。確かに円内に消防車が描かれている。同じ道を何度も歩いていたのに全く気付かなかった。また近所の家の鉢植えにあるきれいな花を見れば指さして近寄っていく。

 私鉄の駅で一緒にベンチに座っていると、私と同世代の女性が声をかけてくれる。孫がいなければ、彼女と話すことは永久にないだろうし、他愛のない会話でも話が弾むのが不思議だ。子供の持つ無邪気という力はすごい。

 電車に乗って彼を膝に座らせると、「立って(外を)みる」と言ってドアの横に立ち、車窓から外を真剣に眺めている。ショッピングセンターに行くと、何にでも興味を示す。書店の絵本コーナーに行くと、いろいろな絵本を見ながら先ほど乗車した私鉄の本を探し当ててくる。隣の旅行本のコーナーでは、ミッキーマウスやドナルドダックの姿を見て興奮している。また各店舗の前を歩きながら、モニュメントとして置かれているリンゴやバナナなどの果物にも反応する。レコード店の前では、「鬼滅の刃」のCMビデオを見つけて見入っている。ショッピングセンターは孫にとってワンダーランドそのものである。

 この時、『沈黙の春』を書いた海洋生物学者のレイチェル・カーソンを思い出した。彼女は殺虫剤DDTなどの化学薬品の脅威を語って、鳥たちが鳴かなくなった春という出来事を訴えた。そして彼女は、『センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見はる感性』(佑学社・上遠恵子訳)という本を書いて、すべての子供が生まれながらに持っている感性を強調している。

 この感性は、人生の困難にあるときには希望の灯にもなり、未知なる自分自身と出会う道程につながると語っている。彼女は子供にはその感動を分かち合ってくれる大人がそばにいることが大切だという。同時に私は高齢者が不思議さに目を見はる子供の感性から学ぶことも大いに意味があると感じるのである。

 ■楠木新(くすのき・あらた) 1979年、京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。50歳から勤務と並行して取材、執筆に取り組む。2015年3月、定年退職。現在、神戸松蔭女子学院大学教授。人事・キャリアコンサルタント。25万部を超えるベストセラーになった『定年後』(中公新書)など著書多数。21年5月に『定年後の居場所』(朝日新書)を出版。

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